第82回 近江八幡・西の湖における内湖とヨシ原の環境#2

 趣旨

琵琶湖東岸、滋賀県近江八幡市に跨る西の湖は現存する琵琶湖最大の内湖です。西の湖にはヨシが群生し、広大なヨシ原を形成しています。このヨシ原は内湖及び琵琶湖の環境を守る役割を果たすとともに、魚類鳥類の生息場としての生態系を形作っています。またヨシは地元の人々の文化・暮らしとも密接な関係を持っています。今回の実習では、内湖の形成過程・特性を学ぶとともに、見学を通してヨシ原の環境と人々との関わりを学びました。

 案内者

  • 山本知実(京都大学大学院農学研究科M1)
  • 井出健人(京都大学文学研究科M1)
  • 谷悠一郎(京都大学農学部B4)

 野外実習の概要

日時
2013年7月7日(日)
場所
滋賀県近江八幡市 西の湖ほか

参加者
11名 (学部生5 [文1;医1 ;農1 ;;奈良大学 -文1;立命館大学 -文1]、 院生5[文1;工1;農1 ; 奈良大学-文2]、 教職員1 [AA研1]、 )
行程

JR京都駅集合→JR安土駅→レンタサイクルで西の湖の観察→昼食→近江八幡へ→安土駅到着→京都駅にて解散

 報告

第82回 近江八幡・西の湖における内湖とヨシ原の環境」の続き

かつては琵琶湖の周りに多数存在した内湖ですが、戦後の干拓の影響により減少し、西の湖は現存する琵琶湖最大の内湖となっています。

西の湖の周辺には近畿地方最大級のヨシ原が広がっています。ヨシ原は水質浄化など内湖及び琵琶湖の環境を守る役割を果たすとともに、ニゴロブナのような魚類、ヨシキリのような鳥類を始めとした様々な生物の生息の場としての生態系を形作っています。




静かな内湖とヨシ原の間を巡る人気の観光遊覧船。




 背丈よりも高いヨシ原の横を走ります。




ヨシは地元の人々の暮らし・文化とも密接な関係を持っています。西の湖南部の円山地域では夏には青々としたヨシ原が広がる光景、冬場には枯れたヨシを刈り取り土地に火を入れるヨシ焼きの光景を見ることができます。このヨシ原を中心に、周囲の田畑、ヨシ産業を営む集落およびその背後の里山、西の湖と琵琶湖を結ぶ八幡堀といった近江八幡の水郷景観は、2006年重要文化的景観の第一号にも選定されています。




刈り取ったヨシは葦簾(よしず)やヨシ葺き屋根を始めとして様々なものに利用・加工されます。かつては盛んだったヨシ産業ですが、安価な中国産ヨシの輸入や現代人の生活様式の変化などの波を受けて衰退の一途をたどります。ヨシ業の衰退に伴い、適切な管理がなされないことから、ヨシ原の面積減少・状態悪化も進んでいます。現在でも円山地域にはヨシを専門に販売する商店が存在し、細々とではありますがヨシ産業が維持されています。また、ヨシ原の保全活動も各所で進んでいます。




ここで、西の湖の大きさをなかなか実感できないという声が上がり、全貌を見ようということで急遽コースを変更し八幡山に登りました。ロープウェイからの景色。眼下には近江八幡の街が広がります。




第82回 近江八幡・西の湖における内湖とヨシ原の環境#3」へ続く

京都大学自然地理研究会

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