第44回 竹林がかかえる2つの問題―面積拡大とテングス病―#2
趣旨
日本において竹はなじみの深い植物のひとつですが、皆さまはどの程度竹についてご存知でしょうか?今回の研究会では日本各地で調査を行っている立命館大学の鈴木重雄さんに、調査地の一つである滋賀県近江八幡市の八幡山で竹林の案内をお願いして、身近な植生である竹林に関して勉強をしていきます。
里山の竹林は、古くから人々の生活と結びついて管理・利用されてきましたが、近年竹林が周囲の雑木林や畑地に侵入し、拡大する現象が見られるようになってきました。一方、竹類の病害(テングス病)によって、竹林の枯死面積が広がっているという問題も存在しています。様々なトピックがある竹林の実情について、現地での実習と鈴木さんのお話を通して理解を深めていただきたいと思います。
案内者
- 鈴木重雄(立命館大学)
- 手代木功基(アジア・アフリカ地域研究研究科) *座学のみ
座学の概要
- 日時
2009年5月15日(金)
- 場所
- 参加者
- 内容
- 植生調査の方法(手代木)
- 里山における竹林の現状と問題(鈴木)
- 竹林の拡大特性とその影響(鈴木)
- 竹林の健康診断プログラムとタケ類テングス病の蔓延(鈴木)
野外実習の概要
- 日時
2009年5月31日(日) (5/17より順延)
- 場所
- 参加者
- 内容
- 竹林が雑木林や畑地などに拡大している様子を実際に観察する
- 植生調査(樹種判別と樹高や胸高直径を計測)を数ヶ所で行う
- 植生調査のデータを整理し、データから竹林拡大を読み解く
- 八幡山周辺を散策し、植生景観の大きな変遷の流れをみる
- 行程
08:30 稲盛記念館南側駐車場集合、出発
10:00 近江八幡着、竹林の拡大に関する説明
10:30 説明後、竹林で調査開始
12:00 昼食
12:30 植生調査結果を簡単にまとめ、議論
13:30 周辺の散策
15:30 終了
18:00 京都着(途中温泉へ寄る)、打ち上げ@水野邸(BBQ)
報告
「第44回 竹林がかかえる2つの問題―面積拡大とテングス病―」の続き
毎木調査ならぬ毎竹調査の様子。決められた高さで、タケの直径を測ります。
調査の後は、山を下りて山麓を歩きながら、外から竹林の観察を行いました。
この時期のモウソウチクの新葉は明るい黄緑色をしており、比較的緑の色が深いマダケと区別しやすいです。(上の黄緑色の部分がモウソウチク、下の濃い緑色の部分がマダケ)
時間がなくなってきたので途中で車に乗り換え、テングス病に罹患したマダケ林に向かいました。テングス病はタケ類を枯死に至らしめる病害で、枝先の接触によって感染します。 テングス病(天狗巣病)、感染して枯死した竹の枝先が天狗の巣のように見えたことからつけられました。テングス病はモウソウチクでは殆ど発症しませんが、マダケやハチクでは感染が問題になっています。
観察した林分でも、葉が落ちて枝先がホウキ状になっていたり(上)、枯死して倒れて藪と化したり(下)していました。
最後に、おまけで近くの西の湖を訪れました。琵琶湖の内湖の名残で、アシやヨシなどの湖岸植生を観察できました。
西の湖の風景。
この後は野洲で温泉に入り、いつものようにバーベキューで打ち上げました。この日は想定よりも参加者が減ってしまったため10kgの肉が少々余ってしまいましたが、下宿している1回生が喜んで持って帰ってくれました。
集合写真。今回は途中の神社で撮りました。
〔謝辞〕今回の研究会では、鈴木さん、村西さん、大西さんに大変お世話になりました。ここに記して、御礼申し上げます。
京都大学自然地理研究会
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