第126回 「賀茂川・植物園での野鳥観察」

 要旨

今回の自然地理研究会では,野鳥観察の実習を行いました.場所は京都市内の賀茂川河川敷及び京都府立植物園で,水鳥や森林性の小鳥を観察することができました.双眼鏡の使い方や,種の識別方法について学び,観察技術を向上させることができました.また,府立植物園では温室にて植物の観察も行い,様々な植物に関する知識も深まりました.

 案内者

前畑晃也(京都大学アフリカ地域研究資料センター 特任研究員)

 野外実習の概要

日時
2024年2月17日(土)
場所
賀茂川河川敷,京都府立植物園
参加者
12名(中学生1名 学部生5名[文5,同志社1] 院生2名[文1,AA1] 研究員1 元教員2 元研究員1)
行程
地下鉄北大路駅に集合(09:00)→賀茂川河川敷にて観察実習(〜11時ごろ)→京都府立植物園にて観察実習(〜12時ごろ)→植物園温室にて植物を観察(〜13時半ごろ)→植物園にて昼食

 報告


まず,前畑さんより双眼鏡の使い方について教えていただきました.報告者は野鳥を観察するのは初めてでしたが,姿勢や調節の仕方について丁寧に教えていただいたおかげで,つつがなく観察することができました.鳥の種の識別が上手くできるようになるためには,結局のところ経験がモノを言うとのことでしたが,色や形などを総合して見て,他の様々な種と比較していくことがコツだそうです.


賀茂川では名の通りと言うべきか,カモをたくさん観察することができました.カモと一口に言っても,様々な種があり,ここでは頭が緑色で嘴が黄色のマガモ,頭が赤いヒドリガモ,頭が赤と緑でお尻が一部クリーム色のコガモ,お尻が黒く体は灰色のオカヨシガモの4種を観察できました.カモは夜行性の種が多いですが昼間活動する個体もいて,この日も泳いでいるカモもいた一方で,草むらで寝ているカモも観察されました.また,オカヨシガモのオスは地味ですが,繁殖活動を有利にするためオスは色が派手な一方,メスは色が地味である傾向があるそうです.


対岸にいたハトの数を数えていました.報告者は37羽だと思ったのですが,前畑さんが数えた結果は42羽でした.正確な数を把握するのは難しいですが、個数や量を把握するというのは科学において重要だという話を聞きました。


ヒドリガモの集団の中に,1羽アメリカヒドリ(とヒドリガモの交雑個体)が混じっていました.頭の一部が深い緑色なのが特徴です.カモは他の種と交雑しやすいそうです.
カモは肉が多く動きもそこまで俊敏でないことから,タカやイタチなどの天敵に狙われやすいそうです.その代わり,カモは脳の半分だけを眠らせる半球睡眠が可能な種もあります.半球睡眠中のカモは,片目だけを開けながらぐるぐるその場で旋回して索敵しています.




ヒレンジャクの群れを見つけました.やや珍しいです.「キーキー」と鳴いています.ヒレンジャクは年により渡ってくる数のばらつきが大きく,この日は100羽以上見られましたが,全く見られない年もあるそうです.


さらにその中に1羽だけキレンジャクがいるのも見つけました.ヒレンジャクは尾が赤いですが,キレンジャクは尾が黄色いです.西日本で見られるのはかなり珍しく,前畑さんもキレンジャクを実際に見たのは初めてだったそうです.


植物園に来ました.河川敷は遮るものも少なく鳥も見やすかったですが,植物園は樹木が多くなかなか鳥を視認できません.それでも,鳴き声から種を判別することができます.


ちょうど蝋梅が見頃でした.


鳥の鳴き声にはさえずりと地鳴きの2つの種類があります.さえずりは繁殖のために行うもので,地鳴きは餌の位置や敵の情報などの普段の意思疎通のために行います.例えば,ウグイスの鳴き声といえば「ホーホケキョ」というものがなじみ深いですが,これはさえずりです.この日はウグイスの地鳴きである「チャッチャッ」という鳴き声が聞こえました.


メジロとヤマガラを見つけました.混群といい,異なる種が集まって一斉に移動する状態にあるようです.混群のメリットとして,敵により気づきやすくなることが挙げられます.さえずりは種によって違いますが,地鳴きは普段の意思疎通のためのものなので,種が違っても似通っているそうです.集まった種同士で食べるものが違うので餌を巡った競争は起きないそうです.冬が終わると,繁殖シーズンになり混群は解散します.


温室に行きました.日本で初めてミズヤシが開花したそうです.


バオバブはマダガスカルに多く種があるそうです.


ナミビアの不思議な草,キソウテンガイ(ウェルウィッチア)についての解説も水野先生にしていただきました.


高山植物の色が鮮やかなのは,紫外線が強い高山では,紫外線が有害なため,紫外線から身を守る色素をたくさん作るためという理由もあります.そのため,低地で育てると色がくすんでしまうことがあるそうです.


最後に温室前で記念撮影をしました.お疲れさまでした.

【この日確認できた野鳥(全32種)】オカヨシガモ,ヒドリガモ,アメリカヒドリ,マガモ,カルガモ,ハシビロガモ,コガモ,カイツブリ,キジバト,アオバト,アオサギ,イカルチドリ,トビ,コゲラ,ハシボソガラス,ハシブトガラス,ヤマガラ,シジュウカラ,ヒヨドリ,ウグイス,エナガ,メジロ,キレンジャク,ヒレンジャク,ツグミ,ジョウビタキ,スズメ,ハクセキレイ,セグロセキレイ,アトリ,カワラヒワ,イカル

京都大学自然地理研究会

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