第125回 「明智越とその周辺の自然と歴史」

 要旨

今回は亀岡市の明智越で巡検を行いました。明智越には、亀岡盆地、京都盆地、及び保津峡が近接しています。この巡検では、明智光秀や愛宕信仰に関する歴史について学習しました。また、道中では、上記の立地をいかして、亀岡盆地の形成過程など、明智越周辺の自然についても学びました。

 案内者

西岡大(京都大学文学部地理学専修3回) 横井雅紀(京都大学法学部3回)

 野外実習の概要

日時
2023年10月21日(土)
場所
京都府亀岡市
参加者
8名(中学生1名 学部生3名[文2, 法1]研究員1名 OB 1名 元教員2名)
行程
JR亀岡駅北口集合、趣旨説明、自己紹介(10:00)→のぼり口(10:40)→峯の堂(11:40)→土用の霊泉(12:20)→鉄塔下到着、昼食休憩(12:40)→鉄塔下出発(13:20)→JR保津峡駅到着(15:20)

 報告

JR亀岡駅に集合しました。出発前に案内人から歴史の説明がありました。


明智越は戦勝祈願のために愛宕山へ参詣する際に明智光秀が通過したとされます。明智光秀が本能寺の変の際に通過したのは、唐櫃越である可能性が高いようです。
また、古くから愛宕信仰がめばえました。西国三十三カ所巡礼では、札所以外ではあるものの、愛宕山に立ち寄ることもありました。その際のメインの道は愛宕谷川を通るルートのようですが、明智越も用いられた可能性があるようです。




保津橋からは亀岡断層崖を遠望しました。また、橋からは、送電線が立地している平坦地も見えました。平坦地は段丘の名残とされており、旧亀岡湖が形成されていた時期があると推測されています。


いよいよ入山です。明智越や亀岡盆地は美濃―丹波帯に属しています。付加体についての説明もありました。


道中では、様々な植物について案内人に限ることなく、参加者が解説していました。例えば、水野先生は、ヒイラギを題材として鋸歯について説明してくださいました。
ヒイラギのような鋸歯が多い植物は、鋸歯があることによって、葉の位置が重なっていても、光を通しやすくなります。また、鋸歯の周辺で気流が発生することで、葉の気孔でのCO2の取り込みがスムーズになり、光合成をすることが容易になります。ヒイラギは光を受けにくい幼樹のときは大きな鋸歯があるものの、背丈が大きくなって光環境がよくなるにつれて、鋸歯がなくなり葉っぱが丸くなります。また、気温の低い北海道ほど葉っぱに鋸歯がある率が高く、気温が高い沖縄ほど丸い葉っぱが多くなります。


土用の霊泉付近からは南北に長い京都盆地を眺めることができました。東西圧縮により、南北方向に断裂が生じることで、京都盆地や亀岡盆地は隆起しました。


鉄塔前でシキミを発見して、その葉の匂いを嗅ぎました。
亀岡盆地では霧が頻繁に発生します。一方で、現在の京都盆地では霧があまり発生しません。京都盆地で霧の発生回数が減少したのは、都市化が原因のようです。都市化によって、気温が以前と比べて下がりません。また、田畑が都市化に伴って減少したことで、水蒸気の供給量も減少したのです。京都盆地でもかつては霧が頻繁に発生していました。


水尾をのぞむ鉄塔がある場所で、記念撮影をしました。


今回の巡検のゴールである保津峡駅でも、記念撮影をしました。保津川は、保津峡周辺の山々の隆起にうちかった先行谷です。
今回の巡検では、途中で小雨が降ったものの、天気が回復し、無事巡検を終えることができました。みなさまお疲れ様でした!

京都大学自然地理研究会

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