第123回   「京大周辺の自然観察:比叡山の地形・植生」

 要旨

今回は京大生にとって身近な山である比叡山を歩き,植生や地質の観察を行いました.また,門前町の坂本にある日吉大社を散策しました.植生については比叡山で見られる代表的な樹木を観察しました.また,地質については比叡山を構成する花崗岩とホルンフェルスを観察し,地質と地形の関係について説明しました.

 案内者

岡田陸太郎 (京都大学文学部地理学専修4回) 福山一茂(京都大学文学部地理学専修4回)

 野外実習の概要

日時

2023年5月3日(水) 9:00〜

場所
滋賀県大津市,京都府京都市
参加者
18名(中学生1名 学部生6名[文4,法1,医1] 院生6名[AA5,文1] 研究員1 教員1 元研究員1 元教員2)
行程
JR比叡山坂本駅に集合(09:00)→坂本を散策(09:15)→登山開始(10:00)→比叡山延暦寺拝観(12:30)→山頂付近で昼食(13:30)→下山開始(14:30)→打ち上げ(BBQ)(17:00)

 報告

当研究会では毎年新歓企画として比叡山での野外実習と大文字の野外実習を隔年で開催しております.

今年度は,比叡山での野外実習を行いました.本来予定されていた日程では天候が悪く,延期の上での開催でしたが,18名の参加者が集まってくれました.ありがとうございます.


9時に比叡山坂本駅に集合し,簡単な自己紹介とスケジュールの説明を済ませた後,比叡山に向かって歩き始めます.まずは,日吉大社付近の石垣を観察しました.一帯の石垣は,ここ近江国で栄えた「穴太衆(あのうしゅう)」という石垣の職工集団の手によるものです.穴太衆は,各地の城郭の石垣を組み上げるために雇われ,この地から全国へ飛び立ちました.


こちらは照葉樹林を代表する樹種の一つであるヤブツバキです.比叡山一帯では,このヤブツバキに加え,アラカシが多く見受けられます.小高木としてはサカキ・ヒサカキ・クロバイが多く観察されました.




琵琶湖が見渡せる地点で一帯の地質構造に関するおおまかなレクチャーを行いました.比叡山の東側には比叡断層が,西側には花折断層がそれぞれ存在し,これが東西方向に圧縮されることで地塁として隆起したものが比叡山となりました.写真の眼下には比叡断層が作る断層崖があります.


可愛らしい参加者もいました.


比叡山の代表的な岩石である花崗岩とそれが風化して生成された真砂土について解説する水野先生です.一見硬そうに見える花崗岩を手で擦ると真砂土となってボロボロと崩れ,驚きの声が上がります.


植生や地質に加えて,比叡山での宗教と自然の関わりについても説明しました.一帯には斜面を削った造成地が数多く存在し,かつてそこに坊があったことが想起されます.




最澄の廟がある浄土院を訪れました.ここでは沙羅双樹に見立てられたナツツバキが植えられているので,仏教三霊樹(無憂樹.菩提樹,沙羅双樹)についての解説をしました.本来の仏教三霊樹は日本では自生していないため,見立てられた樹木が三霊樹として用いられています .


弁慶水の前でなぜそこに水が湧くのか水野先生に解説していただきました.傾斜変換点では水を得やすいということがポイントです.




山頂付近のみはらし広場で昼休憩です.ここで今回の集合写真を撮影しました.ここからケーブルカーで下山し,そのまま交流会へ移動です.




交流会の様子です.今年最初のバーベキューだったこともあり,会話に花が咲きました.みなさまお疲れ様でした.

京都大学自然地理研究会

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