第67回 朽木のトチノキ巨木林に関する調査〔10月編〕

 趣旨

 自然地理研究会10周年にあたる節目の今年度は、滋賀県高島市朽木をフィールドに継続的な調査活動を実施しています。近年,地域のシンボル的な樹木としてトチノキの価値が見直され、それを活かす動きが現れています。一方で、トチノキの巨木が存在する地域では、トチノキと住民との深い関わりが歴史的に持続してきた側面も示唆されます。

 今年度の調査活動では、トチノキ巨木林を有する朽木を対象としてトチノキの生態的、文化的な価値に焦点をあて、人とトチノキの関係性を動かす諸事象を探っていきます。

  [本調査活動の一部は財団法人国際花と緑の博覧会記念協会の助成を受けています]

 朽木では近年トチノキ材の高騰や山林の利用が減少したことなどを背景にトチノキ巨木の伐採が起こり、それが問題視される中でトチノキ巨木の価値が見直されるようになりました。

 今回は複数の伐採現場を見学することで、伐採が現地の自然環境にどのような影響を与えているのかを実際に観察します。

 案内者

  • 青木繁(朽木いきものふれあいの里 館長)
  • 田中孝明(京都大学工学部)
  • 井出健人(京都大学文学部)
  • 飯田義彦(京都大学大学院地球環境学舎)

 座学の概要

日時

2011年10月13日(木)

場所
京都大学稲盛財団記念館
参加者
12名 (学部生4 [文1;工1;立命館大学-文1;奈良大学-文1]、 院生4 [農1;人環1;AA研1;地環1]、 教職員4 [AA研4])
内容

  • 調査地,装備などに関する説明(飯田)
  • 巨樹伐採について(井出)

 野外実習の概要

日時

2011年10月16日(日)

場所
滋賀県高島市朽木
参加者
10名 (学部生3 [文1;工1;立命館大学-文1]、 院生5 [農1;AA研3;地環1]、 教職員2 [AA研2])
行程
稲盛財団記念館南側駐車場に集合→出発→現地到着、青木さんと合流→調査地へ移動、見学(2箇所)→昼食(持参)→移動、見学(1箇所)→見学終了→くつき温泉「てんくう」に移動、入浴→京都に向けて出発→京都にて打ち上げ

 報告

今回は、朽木のトチノキ巨木林に関する調査の一環として、朽木地域におけるトチノキの巨木の伐採跡地を見学しました。

顔合わせと概要の説明を行います。これから一日の実習が始まります。

案内者の青木繁さん(朽木いきものふれあいの里館長)と、神社で合流し、調査地の説明を受けます。午前の実習は、いきものふれあいの里の職員さんやボランティアさんたちも同行することになりました。

今日は3つの現場に行きます。早速一つ目の谷へ向かいます。日本全国の森林にもみられるように、朽木の森林にもスギ人工林が広がっています。トチノキの巨木は、このような人工林を抜けた先の谷の奥に生えています。

現場に到着しました。写真で、向かって右側の斜面の木が広い範囲で伐り倒されています。直径が1mを超すような木材を伐り出すためには、その周囲も事前に伐っておく必要があるとのことです。

現場の谷底に、木材の伐れ端を見つけました。巨木となるトチノキにも、木目によって高価なものとそうでないものがあるそうです。

先ほどの木材を見つけた場所から斜面を見上げたところに、トチノキの伐り株を見つけました(画像中央下部)。トチノキは枝を広く張るため、一本が伐られるだけでこのように広い範囲が日なたとなります。

現場で青木さんのお話を聞きます。これまでの朽木での調査地もそうであったように、今回の谷もこのように斜面の迫った急峻な場所です。

伐り株の場所まで登ってみました。近くで見ると、相当に大きな個体だったことがうかがえます。

第67回 朽木のトチノキ巨木林に関する調査〔10月編〕」へ続く

京都大学自然地理研究会

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