第50回 六甲山地の断層地形
趣旨
京都は三方を山に囲まれた盆地で、みなさんは当たり前のように眺めながら日々の生活を送っていることと思います。では、なぜそこは山なのか、考えたことがあるでしょうか。普段見慣れている景色は何も疑問を抱くことなく通り過ぎがちですが、立ち止まって考えてみれば、今まで見えていなかったものが見えてきて、今まで見えていたものがまったく違って見えてくる面白さがあります。
今回は、典型的な断層山地で、デートスポットしても名高い六甲山系をフィールドに選び、地形や地質をはじめ、植生、砂防、気候など、デートに夢中な恋人たちが日頃見逃しているであろう自然の面白さを学んでいこうと思います。
案内者
- 田村茂樹(理学研究科地球惑星科学専攻修士課程修了)【地形担当】
- 飯田義彦(アジア・アフリカ地域研究研究科グローバル地域研究専攻)【気候担当】
- 田中孝明(工学部)【植生担当】
- 通山潔(医学部)【地質・砂防担当】
座学の概要
- 日時
2009年12月17日(木)
- 場所
- 参加者
野外実習の概要
- 日時
2009年12月20日(日)
- 場所
- 参加者
- 行程
報告
今回は、京都から近いながらもなかなか行く機会のない六甲山地に行ってきました。六甲山系とその周辺には多くの活断層が走っており、六甲山系はこれらの断層の活動で隆起した断層山地です。兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)も六甲山地の南側の断層の一部が活動して起こりました。
まずは市街地の展望台から表六甲を外観。
市街地の切れ目から一気に六甲山地が立ち上がっており、その境界線は東西に一直線に続いています。直線的な地形は断層が作る地形の大きな特徴で、これを利用して空中写真などから断層を探すのが断層調査の第一歩です。
摩耶ケーブルの駅に着きました。
今回は気象観測もやって気温減率を計算してみようということで、乗り換えの時間を縫って気温を測ります。左のメンバーが持っているのがアスマン通風乾湿計という温度計です。
ケーブルカーでぐんぐん登っていきます。
途中の星の駅にて。
クリスマス前だったので、こんな感じでした(苦笑)
向こうの山並の稜線が途切れて鞍部を形成しています。しかも、その鞍部は直線上に繋がっています。
断層がそこを走っているために、断層活動による摩擦で両側の岩石が脆くなって浸食されたものです。断層鞍部といいます。
山頂の駅(掬星台)に着きました。
さて、ここで問題。下の写真で山麓に断層が走っているのですが、どこを通っているかわかりますか?ヒントはやはり地形。切断された尾根や崖が一直線に並んでいます。なお、この写真は大阪方面を眺めています。
ここからは歩き。六甲山系は浸食が進んだ準平原が隆起したので、牧場やゴルフ場まであるほど山頂部は平坦です。天気さえ良ければ快適なハイキングが楽しめます。(※当日は晴れていたものの、北風が強くて死にそうでした。涙)
六甲山系を形作る花崗岩を観察します。石材の御影石として有名です。
松林を進みます。
六甲山地は人里に近かったため、過剰な伐採が行われ、明治ぐらいまではほとんど禿げ山でした。砂防事業として明治・大正以降にアカマツやヤシャブシといった先駆種を植林したため、今でもこれらの種が多くなっています。
いい天気でしたが、寒い!!
ここでも気象観測。湿球温度計は低い方に振り切れていました・・・
途中で自然保護センターによって展示を見る予定でしたが、なんと冬季休業中!!
寒い中をだいぶ歩いて来たため、案内人はメンバーに吊し上げられそうになりましたが、併設のガイドハウスが開いていて命拾い。六甲の歴史・開発・砂防などに関する面白い話をたっぷり聞くことができました。
ロープウェーで有馬に下りる前に、ブナ林を見に行きました。六甲では人為的な収奪が激しかったため、ブナはわずかしか残っていません。残っていた個体の多くも株立ち型で、過去の伐採の影響を窺わせました。
いよいよロープウェーで有馬温泉へ下ります。
裏六甲の山並み。
松枯れが問題となっていますが、裏六甲ではアカマツは健在でした。
以前は花崗岩の禿げ山でしかも断層が無数に走っているため、六甲山系は斜面災害の常習地域でした。今でも砂防ダムなどが多く、"Sabou"のメッカの一つです。
一路、有馬温泉へ。
有馬温泉には下りましたが、温泉はちょっとおあずけにして、最後の巡検スポット、白水峡に向かいます。有馬街道沿いにありますが、有馬街道自体が六甲断層の活動によってできた直線的な谷(断層谷)です。「白水峡」という地名は、そこから流れ出る水が断層活動によって破砕された花崗岩の砂(真砂)によって白く濁っていることからつけられました。
白水峡の露頭。 小さな断層が無数に走っています。
付近には、断層によって破砕された土砂が崖錐を形成しています。
予定していたところを全部回って、ようやく温泉+打ち上げです。
おかげさまで、記念すべき50回。お疲れさまでした!
京都大学自然地理研究会
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