第48回 紀伊山地の自然環境と修験道#2
趣旨
大峰山脈は、紀伊半島中央部に位置する南北に伸びる山系です。地質学的には西南日本の外帯に当たり、穏やかな山並みが連なる京都周辺の内帯とは違い、急峻な山地が形成されています。主峰の八経ヶ岳は近畿地方最高峰(1,915m)に当たり、亜高山帯植生であるシラベやトウヒ、山地帯の代表種であるブナを抱えています。一方で、大峰は急峻な地形がもたらす険しさから修験道における修行の場とされ、千年以上にわたり人々に登られてきました。本実習ではこれらの要素を踏まえ、紀伊山地の地質・地形、植生、修験道の概要を学びます。
案内者
- 通山潔(医学部B1)【地質・地形担当】
- 田中孝明(工学部B1)【植生担当】
- 竹内明史(農学部B2)【修験道担当】 *座学のみ資料参加
座学・ミーティングの概要
第1回
- 日時
2009年10月13日(火)
- 場所
- 参加者
第2回
- 日時
2009年10月20日(火)
- 場所
- 参加者
第3回
- 日時
2009年10月23日(金)
- 場所
- 参加者
野外実習の概要
- 日時
2009年10月24日(土)−25日(日)
- 場所
- 参加者
- 行程
07:18 京都駅発→<近鉄>→下市口駅→<タクシー>→
10:35 行者還トンネル西口着(入山)
15:57 弥山小屋着〔テント泊〕
10/25(日)
05:11 弥山小屋発→八経ヶ岳ピストン→
06:06 弥山小屋発
11:26 行者還トンネル西口着 <タクシー>
12:35〜 洞川温泉入浴・散策・打ち上げ→<奈良交通バス>→下市口駅→<近鉄>→
21:18 京都駅着
報告
「第48回 紀伊山地の自然環境と修験道」の続き
少し登ると、台風による風害跡地がありました。
標高1600mに達するこの辺りでは、ブナ林よりも標高の高い所に分布するトウヒ林が見られます。ブナ林は山地帯、トウヒ林は亜高山帯に相当し、このように標高によって植生が変わることを植生の垂直分布といいます。
鞍部へと少し下るとトウヒはすぐに姿を消し、ハウチワカエデやブナの森に戻りました。垂直分布は標高にとても正直なようです。
途中、行者さんと行き違いました。現代の行者さんは普通にザックを背負ってるんですね。
聖宝大師像。
修験道の当山派の祖とされる人物です。
聖宝ノ宿跡を過ぎてからはぐんぐん標高を稼ぎ、本格的に亜高山帯へ入っていきます。トウヒ林をしばらく登っていくと、亜高山帯のもう一人の主役、シラベも登場しました。
倒木上更新。
シラベやトウヒなどの針葉樹に多い更新様式で、寿命や天災などによって倒れた幹の上に、種が落ちて芽生えたものです。倒木の上は下草に光を遮られたり菌に侵されることが少なく、またコケのおかげで適度に水分も保たれるため、実生には好適な環境といわれています。
最後の急登をがんばって、弥山に到着です。今日はここにテントを張って泊まります。テントを立て始める頃には、雨も少し強くなってきました。明日も天気はよくないということで天ノ川温泉に向かう予定を変更し、八経ヶ岳に登ってから来た道を帰ることにします。
翌日は5時過ぎに弥山を出発。近畿最高峰の八経ヶ岳を目指します。辺りはまだ、闇の中です。
闇夜の森。
夜明けを待って山頂で記念撮影。しかし、霧の中で展望はありません。
八経ヶ岳山頂周辺では、稜線の西側がなだらかな斜面なのに対して、東側はスッパリと切れ落ちています。日本アルプスと同様、氷期に西寄りの風が雪を吹き上げ、雪の重みで東側斜面が削られたのではないかと思われます。
偏形樹。
風が一方向からだけ強く吹くと、風上側の枝は乾燥によって枯れてしまい、風下側の枝だけが残ります。
「第48回 紀伊山地の自然環境と修験道#3」へ続く
京都大学自然地理研究会
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