第104回 奈良盆地の形成と里山の棚田景観-古代の都・明日香村探訪-

 趣旨

奈良県明日香村は、飛鳥時代に都が置かれ、現在でも高松塚や石舞台など多くの古墳遺跡が残っていることで有名です。さらに平成23年には稲渕の棚田をはじめとする奥飛鳥の里山景観が重要文化的景観に選定されるなど、日本における代表的な里山景観も有しています。今回の巡検では、そんな古代ロマンの地・明日香村をめぐり、南奈良の自然と文化を学びます。

 案内者

中島柚宇(文学部)

神品芳孝(文学研究科)

金森直哉(文学部)

 野外実習の概要

日時
11月12日
場所
奈良県明日香村
参加者
10名(学部生5[文3、工2]、院生4[文3、AA研1]、教職員1[文1])
行程
近鉄飛鳥駅集合→レンタサイクルで国営飛鳥歴史公園館・高松塚古墳見学、明日香村の歴史について説明→稲渕の棚田へ移動、棚田と地形形成について説明→昼食→石舞台古墳を見学→岡寺で紅葉観賞→甘樫丘展望台から奈良盆地、大和三山を観察し、地形成因について説明→あすかの湯にて打ち上げ→解散

 報告



今年最後の自然地理研究会は、歴史ロマンの地・奈良県明日香村にて行いました。



駅前でレンタサイクルを借りて、いざ出陣!




飛鳥村の歴史についてレクチャー後、飛鳥歴史公園館へ。無料の施設なのにこの精巧なジオラマ!本日のコースの地理関係を概観します。




高松塚古墳。すぐ近くに資料館があり、発掘された壁画を鑑賞しました。とても古代の人が描いたとは思えない(と言ったら失礼でしょうか)、写実的な壁画に感動。




どんぐりがたくさん落ちています。本来西日本ではその気候によって自然の状態で生育する森林(→一次林、極相林、自然林)は、シイやカシといった照葉樹の森林で、それらの樹木は太陽の当たらない日陰を好み、陰樹とも呼ばれます。一方、伐採など人間による干渉によってそれらの木々がなくなり、開けた地面に太陽が射します。そうすると、コナラやクヌギなどの落葉樹林が生育します。これらの樹木は太陽を好むため陰樹に対して陽樹と呼ばれます。この高松塚古墳が作られたころには、まだここは照葉樹林だったのでしょうか。それとも、水稲耕作がすでに広まった時代なので、土地が拓かれ、落葉樹林が生じていたのでしょうか。もしかしたら田んぼだったかもしれませんし、はげ山だったかもしれません。そんな風に、古代の自然環境に思いをはせるのも楽しいですね。




田んぼのが広がる道を自転車で走り抜けます。空は秋晴れ、気持ちいい!




こちらは稲渕地区の棚田。この棚田景観を含めた、飛鳥村南東部が、平成23年に重要文化的景観に選定されています。秋の初め、収穫前の時期には、稲穂と彼岸花のコントラストが美しい景勝地です。棚田は地すべり地形に多いといわれています。いくつか要因が考えられていますが、一つには、地すべりによって地中の養分がかきまぜられ、耕作に適した土地となるそうです。




石舞台古墳そばの広場で昼食です。古代米で作られた「飛鳥巻き」をそばの売店で購入。とてもおいしかったです。芝生が気持ちいいですね。




石舞台古墳は、飛鳥時代の権力者・蘇我馬子の墓と言われています。小さいのかと思いきや、下に巨石が続いていて、空洞になっています!古代においてこれだけの巨石を運ばせる権力たるや…。




中から石舞台古墳を見上げるとこうなっています。絶妙なバランスですね。




上からのぞき込むとこんな感じです


第104回 「奈良盆地の形成と里山の棚田景観-古代の都・明日香村探訪-」(2)」に続く

京都大学自然地理研究会

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