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北西功一

(写真上:ドンゴ村での調査のアシスタントと北西。)

 関心分野:

狩猟採集民研究、生態人類学、経済人類学

 研究テーマ

研究テーマ「ピグミー系狩猟採集民における生態人類学的、経済人類学的研究」現在は、カメルーン東部州熱帯林に暮らすピグミー系狩猟採集民バカを対象に、彼らの農耕化や現金経済の浸透が彼らの社会に与える影響を調査している。最近は特に、バカにおける農地の所有や相続の形態を詳細に見ることによって、狩猟採集における土地の所有の形態と大きく変化していることを研究している。特に近年増えつつあるカカオ畑がバカにとって「財産」となりつつあることに注目し、これにより彼らの生活が今後どのように変化していくのかということに興味を持ってみている。

 研究歴

1988年4月 京都大学大学院理学研究科入学。修士課程時代は沖縄県の伊平屋島で漁業をおこなっている人たちの調査をおこなう。

1991年10〜1992年12月(約14ヶ月間) 博士課程の二年目に初めてのアフリカ調査。コンゴ共和国北東部のモタバ川最上流の村リンガンガ・マカオ村付近に居住する狩猟採集民アカ(ピグミー系狩猟採集民の1グループ)の生態人類学的、経済人類学的調査をおこなう。

1993年11〜1994年3月(約5ヶ月間) コンゴ共和国の治安が悪化したため、カメルーンに調査地を変更。先に入っていた塙、小松と合流し、東部州のロトン村で狩猟採集民バカ(ピグミー系狩猟採集民の1グループ)の生業活動(特に焼畑農耕・写真1)と食物分配の調査をおこなった。いろいろな事件に巻き込まれたが、何とか調査を完了。その後、市川先生とカメルーン各地を旅行する。ナイジェリア国境近くのエユモジョクでは当時大学院生だった佐々木重洋(現名古屋大学助教授)氏のところでしばらく滞在し(写真2)、北部のマルワ周辺にも行った(写真3)。熱帯雨林とはまったく違ったアフリカを見ることができて面白かった。

(写真1(左上):除草するバカの男性。  写真2(中):主食であるキャッサバを袋に入れて絞ろうとしている。 写真3(右上):リムスキー付近の風景。)

1995年8〜11月(約4ヶ月間) 1991、2年の調査地であるコンゴで再び調査をおこなう。食物分配と生業活動についてのデータを集め、以前の調査で不足していた部分の聞き取りをおこなう。

1996年3月 京都大学大学院理学研究科博士課程終了。理学博士を取得。

1997年10月 山口大学教育学部に講師として就職する。

1999年2〜3月(約1ヶ月間) カメルーン東部州のドンゴ村でバカの調査をおこなう。焼畑農耕の畑の調査が中心であった(写真4)。また日常の現金を介したもののやり取りも観察した。さらに、このとき、ドンゴ村にカトリック・ミッションの援助を受けて小学校ができ、ドンゴ村の農耕民とバカの子供たちの一部が通い始めた。彼らへの学校教育の導入についても観察した(写真5)。

(写真4(左上):畑の調査を手伝ったバカの男性。  写真5(右上):黒板に文字を書くバカの男の子と先生。

2000年8〜10月(約3ヶ月間) 当時大学院生であった平沢さんとともに、Beson村で調査を始めたが、その後再びドンゴ村に戻り調査をおこなった。内容は1999年の調査と同じである。

2004年2〜3月(約1ヶ月間) ドンゴ村で農地の所有と相続について集中的に調査をおこなった(写真6)。調査地の行きと帰りにはさまざまなトラブルに巻き込まれたが、何とか無事に帰ってくることができた(写真7)。

(写真6(左上):きれいに除草されたカカオ畑と所有者のバカの男性。  写真7(右上):Lokomo川に落ちた橋とトラック。)

 主な研究業績

学術雑誌

1. Kitanishi, K. The Aka and Baka: Food sharing among two central Africa hunter-gatherer groups. Senri Ethnological Studies 53, The Social Economy of Sharing: Resource Allocation and Modern Hunter-Gatherers: 149-169. 2000.

(要旨)ピグミー系狩猟採集民で共通の祖先ともつを考えられるコンゴ共和国北東部のアカとカメルーン南東部のバカの食物分配について、定量的なデータに基づいて比較をおこなった。アカは狩猟採集生活をかなり維持しているものの、バカは自ら畑を持ち、農耕をおこなっている。また、アカには現金経済とかかわる機会がほとんどないが、バカでは日常的に物の売買をおこなっている。このような生業及び経済的な状況の違いにもかかわらず、アカと同様にバカも盛んに食物分配(特に女性による料理の分配)をおこなっている。ただし、そこには定住化に伴う分配相手の固定化や、肉を現金収入源とするために起きる分配量の減少が見られた。つまり、バカの経済は単に現金経済に飲み込まれてしまったのではなく、彼らのもともとの経済システムである食物分配システムを一部変更しつつも維持しながら、変化に対応していることが明らかになった。

2. Kitanishi K. Cultivation by the Baka hunter-gatherers in the tropical rain forest of central Africa. African Study Monographs, Supplementary Issues No. 28: 143-157. 2005.

 (要旨)カメルーン南東部に居住する狩猟採集民バカは1950年代に農耕化及び定住化を始めた。その原因を探るために、中央アフリカ共和国南部に居住するアカの一部が1970年代に定住・農耕化した事例と比較した。その結果、定住化・農耕化には植民地政府及び独立後の政府の働きかけなどがあるものの、最も重要な要因として近隣の農耕民との関係の変化が浮かび上がった。いくつかの政治、経済的要因によって、アカもしくはバカと近隣の農耕民との関係が厳しいものとなり、アカ、バカが農耕民から農作物を得ることが容易でなくなったことが、両者の間で共通する農耕化の直接的な原因であるということが明らかになった。

本(分担執筆)

3. 北西功一. 「狩猟採集民バカにおける学校教育の導入−カメルーン南東部ドンゴ村の事例から」『英語教育学研究』239-256. 渓水社. 2004.

紀要等

4. 北西功一. 「中央アフリカ熱帯雨林の狩猟採集民バカにおけるバナナ栽培の受容」『山口大学教育学部研究論叢』52(1): 51-69. 2002.

5. 北西功一. 「カメルーン南東部の狩猟採集民バカにおける貨幣経済の浸透」『山口大学教育学部研究論叢』53(1): 51-65. 2003.

6. Kitanishi, K. The impact of cash and commoditization on the Baka hunter gatherer society in the southeastern Cameroon. 市川光雄編『生活環境としてのアフリカ熱帯林に関する人類学的研究』(科学研究費基盤研究 (A)(2)研究成果報告書)pp.119-133. 2004.

国際会議における発表

7. Kitanishi K. “Food sharing and residential groups of the Aka and Baka hunter-gatherers in central Africa.” 8th International Conference on Hunting and Gathering Societies: Foraging and Post-Foraging Societies: History, Politics, and Future. National Museum of Ethnology, Osaka, Japan, October, 1998.

国内学会・シンポジウム等における発表

8. 北西功一「狩猟採集民によるプランテン栽培の受容-カメルーン東南部のバカ・ピグミーの事例から」民族自然誌研究会第26回例会 バナナ文化史研究の提唱―アフリカへの伝播と展開 於 京大会館(京都市)2002年3月。

9 .北西功一「狩猟採集民による土地保有と農耕化に伴うその変化:アフリカ熱帯雨林に居住するバカの事例から」特定領域研究「資源の分配と共有に関する人類学的統合領域の構築−象徴系と生態系の連関をとおして−」“自然資源の認知と加工”研究班第5回研究会 於 弘前大学 2005年5月。

2005年7月14日 現在