エコックの名を最初に意識したのは,カメルーン東南部の地図を眺めていたときだった。 1999年夏,私は,カメルーンとコンゴの国境を流れるジャー川沿いの村, ドンゴに滞在し,バカ・ピグミーの人類学的調査を続けていた。 1990年代に入り,内戦でコンゴ民主共和国(旧ザイール),コンゴ共和国での調査が 難しくなってきたので,我々の調査グループは,カメルーンの熱帯雨林に新しい フィールドを求めたのだった。 これまでに,総計すると10人を超える教員,院生たちがこの地域に散らばり, ピグミーや農耕民の調査をおこなっている。 移動には四輪駆動の車が必要なので,そのやりくりにはいつも頭を使う。 地図を眺め,各人がいる地域を思い起こしながら,今度○○君のフィールドに車をやり, その帰りに××さんを拾って首都ヤウンデに出る,そして…といった算段をする。 そのとき,かつて私が歩いて調査した地域のはるか南,道の通ってない森のただ中に, エコック・エダンバワ (Ekok Edanbawa) という地名の記された, 奇妙な記号を見つけた。 燈台のマークのようなその記号は凡例には載っておらず,地図のどこにも 同じものは描かれて ないのだった。 「何や,これは」。 私の脳裏に,エコックというエキゾチックな名前とともに,その記号が刻み込まれた。 {{img IMG_1947.jpg}} >> 次頁 森の道 へ     ↑↑[[目次|Ekok行]] へ