!!ヤウンデ第1大学人文社会学部における研究・教育 ヤウンデ第一大学(Universite de YaoundeI)はカメルーンを代表する大学で、ここの人文社会学部と京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の間には、2003年にMOU(学術交流に関する覚え書き)が交わされている。また、かつてカメルーンにおける人文社会科学研究の中心であり、東京外国語大学のAA研とも交流があった人文科学研究所(ISH)が解体されたあと、ここに職場を得た研究者もあり、わが国の研究者と浅からぬ関係をもっている。  ヤウンデ大学の社会学・人類学科(Sociology and Anthropology Department)は初代教員にValentin Nga Ndongo氏を迎えて、1975年にまず社会学科として創設され、後に人類学科が併設された。社会学のコースと人類学コースは、それぞれが固有のプログラムをもつ。社会学、人類学ともに5年制(Level 1〜5)で、3年生で学士号がとれる。さらに、4年生で修士を出す資格が与えられる。しかし、実際はフィールドへ調査する期間も含めると修士を取るのに最低でも5年、博士だと7-8年かかる。現在、社会学のコースには、420名の1年生、300名の2年生、250名の3年生、120名の4年生、20名の5年生がいる。また、人類学科には、200名の1年生、175名の2年生、130名の3年生、100名の4年生、10名の5年生が就学している。このうち人類学コースの4年生には、中央アフリカ共和国からの留学生が2名いる。 社会学科においては、Valentin Nga Ndongo助教授をはじめとする6名の教官が、人類学部では開発人類学などの分野で知られたPaul Nkwi Nchoji教授をはじめに5名の専任教師が教鞭をとっている(教官と研究テーマは以下を参照)。社会学、人類学ともに3年で学士号をとって卒業する学生が最も多く、近年はカメルーン政府の役人となる者とともに、WWFやGTZ、FAOなどの国際機関・NGOで働く学生が増えている。また、修士号をとり、カメルーン政府や国際機関専属の調査員として働く学生も出てきている。博士在籍の学生の多くは、ヤウンデ大学を終えた後、フランスやベルギーに留学して博士号を取得し、カメルーンに戻ってきて大学の教員を目指す者が多い。 現在、人類学コースの5年生に在学し博士取得を目指している学生は全員、カメルーンの都市や地方でフィールドワークを行っている。研究テーマは、「コンドームの受容」や「社会福祉とコミュニティの開発」、「HIVと呪術」、「伝統食にみる近代化の影響」など現代的なテーマを扱ったものと、「首長社会におヵる儀礼」や「仮面と彫刻」、「伝統医療」などのようなクラッシクな人類学のテーマを扱ったものがある。  学生の研究テーマは就職を意識したものが多いが、在学中にNGOや政府に依頼された調査を行うこともある。例えば、人類学部のMbonji助教授はLEAAA(Laboratory of Ethnology and Anthropology Applied to Africa)というNGOを運営しており、そこでは政府やNGOに依頼された調査を学生の協力を得て行っている。とくに、「家庭内暴力」や「売春婦」、それに熱帯雨林の薬用植物に関する「伝統的知識」などについての調査を行い、得られた資料を政府やNGOに提供している。   !社会学部教官と研究テーマ Valentin Nga Ndongo 助教授・主任 (政治社会学、コミュニケーション論) Jean Mfoulou 助教授 (政治社会学) Jacqueline Ekambi Moutome講師 (都市人類学、女性学) Joseph Marie Zambo Belinga講師 (政治社会学) Joseph Epee Ekwalla講師 (労働社会学、組織の社会学) Jean Nzhie Engono講師 (教育社会学) Patrice Onana Onomo助手 (開発社会学、宗教社会学など) Paulette Marie-Odile Beat Songue非常勤講師 (現代社会の社会学) Nassourou Saibou非常勤講師 (儀礼の社会学) Chinji Kouleu非常勤教授 (農村社会学) Godefroy Ngima Mawoung非常勤講師* (社会科学の方法論、農村社会学)   !人類学部教官と研究テーマ Paul Nkwi Nchoji教授、人類学部主任(政治人類学、医療人類学など) Mbonji Edjenguele助教授、(文化人類学、開発人類学など) Godefroy Ngima Mawoung講師*、(社会人類学、経済人類学など) Luc Mebenga Tamba講師、(社会人類学、社会科学の方法論) Celestin Ngoura 講師、(言語人類学) Jean Nzhie Engono非常勤講師 (環境人類学、開発論) Antoine SOCPA助手 (医療人類学、社会人類学、経済人類学など) Patrice Onana Onomo助手 (宗教人類学) *2006年より、Ngima講師の所属先は、ヤウンデ大学ではなく、科学省(Ministere de la Recherche Scientifique et de l'Innovation Chef de Division de la Promotion et de l'Appui a l'Innovation)に異動になったが、現在でもヤウンデ大学において教鞭をとっているとのことである。 '''[所在地]''' Departement de Sociologie et Anthropologie, Universite de Yaounde I B.P. 755 Yaounde, Cameroon