日時:2011年1月22日 (土) 15:00~17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館中会議室
   

自然に生きる

講師:水野一晴(京都大学アフリカ地域研究資料センター)

近年、地球温暖化の影響で世界の氷河が溶け始めている。アフリカにはキリマンジャロとケニア山、ルウェンゾリ山の3つの高峰にのみ氷河があるが、それらの氷河が近年急速に縮小している。また、ケニア山ではその氷河の後退を追うように植物が山の高い方に移動している。2009年の調査では、これまで氷河の斜面下には見られなかった植物種も現れ、それは氷河の後退とは無関係に、気温上昇が直接影響していると推定された。1997年の調査のときには、氷河の先端からヒョウの遺骸も発見され、その年代は今から約900年前のものであることが判明した。900年前は日本では平安時代末期にあたり、そのころは世界的に暖かい時代であったが、その後、寒い時代が19世紀末まで続いた。そのため、ヒョウは氷の中にずっと眠っていたのである。しかし、その眠りを覚まさせたのは他ならぬ近年の温暖化であった。また、アフリカ最高峰キリマンジャロの氷河も近年急速に後退し、現在山頂付近にわずかに残っているにすぎない。キリマンジャロとケニア山の氷河はあと10-20年で消滅すると言われている。これらの山頂は地元住民にとって神の宿る場所として信仰の対象になっており、その山頂に白く輝く氷河は、人々の精神的支柱でもある。

 

また、一方、ナミブ砂漠ではその過酷な環境に植物が生え、動物が生き、人々が生活している。一面砂丘や礫砂漠が広がる中、季節河川沿いにのみ森林が分布している。季節河川はふだんは水が無く、年に数日―数十日のみ洪水(水が流れること)が起きる。しかし、近年、その洪水の日数が減少し、自然が大きく変化している。そして、その砂漠の中の脆弱な自然に頼っている人々に大きな影響が生じている。この講義では、アフリカにおける近年の気候変動と自然の変化、そしてそこに住む人々の生活に焦点をあて、みなさんとともにそれらについて議論していきたい。

 

【講師プロフィール】

水野一晴(みずの かずはる)
1982年 名古屋大学文学部(地理学専攻)卒業。1985年  北海道大学大学院環境科学研究科(環境構造学専攻)修士課程修了。1990年  東京都立大学大学院理学研究科(地理学専攻)博士課程修了(理学博士) 。1991-1993年 日本学術振興会特別研究員(PD)。1992-1996年 茨城大学、国士舘大学、日本大学、横浜国立大学等の非常勤講師。1996年 京都大学大学院人間・環境学研究科助教授。1998年 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科助教授(現在に至る) 。
主要著書
『高山植物と「お花畑」の科学』,古今書院,1999年,145頁.
『植生環境学-植物の生育環境の謎を解く-』(編著),古今書院,2001年,222頁.
『アフリカ自然学』(編著),古今書院,2005年,270頁.
『ひとりぼっちの海外調査』,文芸社,2005年,322頁