日時:2010年8月28日 (土) 15:00~17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館中会議室
   

アフリカの自然を守る知恵

講師:山越言(京都大学アフリカ地域研究資料センター)

野生動物と共生するために必要なこと

講師:西﨑伸子(福島大学)

 

アフリカの豊かな自然にはグローバルな価値があり、国際社会が責任を持ってその自然を護ることが必要だと考えられています。しかしながら、このような視点には、そもそもそのような自然が誰のものであり、ほんらい誰が主体として護る べきかという視点が欠けていないでしょうか。

アフリカの人々の権利や主体性を無意識のうちに排除するこのような考え方は、植民地化という歴史の中で成立したものです。今日、住民参加を謳う様々な自然保護プロジェクトが、そのような視点の克服を目指して活動しています。

自然とともに暮らす人々の自然観は、社会や日々の行為の中に埋め込まれていて、容易には言語化されないものです。西アフリカ、ギニア共和国ボッソウにおける30年にわたるチンパンジーと精霊の森の保全活動の事例をもとに、在来の自然観や自然保護の考え方の一端を紹介してみたいと思います。

アフリカの在来自然観と、近代的な自然保護との両立を考えるとき、多神教的自然観に基づき、近代的自然観を150年かけて消化吸収した日本の経験を比較することは意義深いと思います。同時にまた、私たちが日本の自然保護の将来を考えるとき、今日のアフリカで起こっている事例から学ぶべきこともたいへん多いと言えます。どこか遠くの珍しい出来事としてではなく、私たちの周りの出来事と繋がっているものとして、西アフリカ、ギニアの事例を考えてみましょう。

 

アフリカのサバンナに生息する大型哺乳類は、多くの観光客にとって憧れの存在です。さらに、これらの野生動物は、今やアフリカ諸国の観光産業を発展させる大切な観光資源となっています。

一方で、野生動物の生息する領域と隣り合わせに暮らす人々は、従来から野生動物を狩猟して地域社会で分け合って食べたり、崇める対象としたり、そのイメージを歌や踊りや語りで表現したりして、野生動物にさまざまな意味を付与してきました。また、野生動物による農作物への被害に対しても、試行錯誤をしながら自分たちで対処方法を編み出してきました。人々は多様な野生動物とのかかわり方を長い年月をかけて見出してきたのです。

しかし、時代が変わり、野生動物の乱獲や国際的な野生動物保護運動が高まるにつれて、アフリカの人々と野生動物をとりまく状況には大きな変化が生じています。本講座では、エチオピアの野生動物保護をとりあげて、1990年代以降の住民参加型の野生動物保護に関連するさまざまな動きを紹介します。そこから、現代社会における人間と野生動物の共生についての<より良い方法>を受講生のみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

 

【講師プロフィール】

山越 言 (やまこし げん) 
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授。1992年よりギニア共和国にて野生チンパンジーの生態調査を行う。現在は、人と野生動物の共存についての研究を進めている。

 

 

【講師プロフィール】

西﨑伸子(にしざき のぶこ)
福島大学行政政策学類准教授、NPOアフリック・アフリカ副代表理事 京都府生まれ。2004年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻研究指導認定退学、2005年博士(地域研究)、2006年より現職。専門はアフリカ地域研究、環境社会学。おもに東アフリカ地域の住民参加型の野生動物保全について研究をおこなっている。最近は、日本の里山保全にも関心を持ち、獣害対策や自然環境の持続可能な利用について調査を進めている。著作に『抵抗と協働の野生動物保護』(昭和堂、2009年)など。