日時:2010年5月22日 (土) 15:00~17:00
場所:京都大学稲盛財団記念館中会議室

アフリカ農村の様々な「商い」

講師:池野旬(京都大学アフリカ地域研究資料センター)

 

アフリカの農村での主な生業は農業ですが、それのみに専念しているわけではありません。雨の降り方が年によって大きく変動するために、農業のみに依存していては自家消費用の食糧すら確保できないだけでなく、日々の生活費や大きな出費を伴う教育費・医療費をまかなえません。そのため、農村世帯はできうるかぎり様々な生業に従事して危険分散を図り、家計の安定をめざしています。日雇いや出稼ぎといった雇用労働と並んで、様々なものを「商う」ことも、このような生計戦略の中に組み込まれています。

事例としてとりあげる東アフリカのタンザニア北東部にある田舎町近郊の農村では、女性たちが農産物、畜産物、手作りの工芸品を毎週開かれる田舎町の市に売りに行き、そして魚、肉、紅茶の葉、食器、衣類などを購入して帰ってきます。男性たちは、田舎町の建設ブームに乗じて、建築資材である砂利、砕石、レンガ作りにさかんに行うようになっています。

今回は「商う」という視点から、農村世帯の商行為とその背景にある生産活動もとりあげて紹介していきます。

だましだまされながら助け合う商い

講師:小川さやか(国立民族学博物館)

 

アフリカ都市の路上ではどこでも、ファッショナブルな衣装に身をつつみ、古着を行商したり、路面に広げて販売している「いなせな」若者たちの姿をみることができます。彼らの多くは、農村から都市へと出稼ぎにきた貧しい人びとです。「学歴なし技能なしカネなしコネなし」のナイナイ尽くしの彼らは、都市に出稼ぎにきてもなかなか正規の雇用機会を得ることができません。それでも毎日、知恵を絞ってお金を稼いでいるのです。本講座では、タンザニアの古着売りの若者たちの「騙し騙されながら助け合う」商売のしくみと、「群れあうけれど、慣れ合わない」仲間関係について報告します。それを通じて、不確実なアフリカの都市世界を他者とともに生き抜くための機知ujanjaについて論じます。そこには、アフリカの商人とはかなり違った現実を生きている私たちが、彼らから学ぶことのできる「生きるヒント」が隠されているでしょう。

【講師プロフィール】

池野 旬(いけの じゅん)
京都大学アフリカ地域研究資料センター教授1955年大阪府生まれ。1978年東京大学経済学部卒。アジア経済研究所研究職員、京都大学准教授を経て、2008年より現職。主な著作に『ウカンバニ-東部ケニアの小農経営-』1989,アジア経済研究所。『アフリカ農村と貧困削減-タンザニア 開発と遭遇する地域』 2010,京都大学学術出版会。これまで30年以上にわたる調査研究活動では、.東アフリカ農村の社会関係、経済活動がどのように変わっていくのかに、主に関心を持ってきた。最近はタンザニアのキリマンジャロ州に毎年1ヶ月程度出かけ、農業や非農業活動の変化、地方都市の拡大について調査を続けている。

【講師プロフィール】

小川 さやか(おがわ さやか)
国立民族学博物館研究戦略センター機関研究員.2007年京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修了.2009年博士(地域研究)2010年4月より現職.専門はアフリカ地域研究、文化人類学。タンザニアの都市零細商人(路上商人)が、不可逆的に浸透するグローバル資本主義経済の論理に適合しながら、また流動的で半匿名的な都市社会の人間関係に適合しながら、いかにして互いの生を保障しあう豊かな生活世界を築き上げていくのかについて探求している。現在は、特に東アフリカ諸国間、東アフリカ諸国とアジア諸国をまたぐ商業ネットワークを調査している.
主な論文に「都市零細商人の経済活動を支える連帯と生活信条」2004,「タンザニア都市古着商人の商慣行にみられる平等性と自律性」2007など