2. バカの精霊儀礼についての研究

私の研究は、バカの儀礼・宗教に焦点を当てています。ピグミーの宗教に関しては、まだ研究が進展しておらず、調査の余地が大きく残されています。ピグミー系の諸集団の間では、「森の精霊(spirit)」と呼ぶことができるような超自然的存在が信じられており、バカでは「メ(me)」と呼ばれています。バカの集落(50人程度)における生活の中では、精霊の儀礼パフォーマンスがよく行われます。これは、集落の男性たちが、儀礼集団を形成し、演じ手の正体を隠す衣装などを用いて、主に女性や子どもたちに対してもっともらしく精霊の存在や行動を演出するものです。

これらの営みは、人々の社会的緊張を和らげ、集団の結束を固める重要な意義をになっていると思われます。私は、これを「精霊儀礼」と見なして中心的な研究対象としました。その際、精霊儀礼は、なぜバカの人々によって支持され、繰り返し演じられるのかということを基本的な問いとして意識するようにしています。つまり、バカの人々にとっての精霊儀礼の魅力、楽しみはどこから来るのか、ということです。

 

集落の風景

集落は、核家族が住む小屋が、広場を挟んで向き合う形を取る。広場は、多くの場合、森を切り開いた裸地に作られる。写真左手奥には、精霊の隠れ場である「ンジャンガ」の入り口が見える。これは、ちょうど神社のような感じの場所で、普段は人の出入りが禁じられている。

 

建設中のモングル

木の葉を用いた特有の小屋「モングル」。モングルの作成は女性の仕事。