7)自然保護とキツネザルたちの未来

マダガスカル島に生息するキツネザルたちに未来はあるのだろうか。40種のキツネザル類のうち、ごく最近発見された7種を除く33種について国際自然保護連合(IUCN)がおこなった調査によれば、19種が絶滅の危機に瀕しているとして”レッド・リスト”に記載された。乾燥地に生息する種といえども森がなくなれば生存することは不可能である。森林面積はすでに国土の7%程度になっているが、保護地の面積は国土の約1.3パーセントにすぎない。保護されていない森林は開発などによって伐採され、生物の多様性は急速に失われていきつつある。このままの状態で推移すれば、あと四半世紀のうちに残った森林のほとんどが消失するという予測がだされており、早急な保護対策が必要なのである。これはマダガスカルだけの問題ではない。哺乳類全体の24%に相当する1130種が絶滅の恐れのある種であり、世界的規模での生息地の破壊・劣化がすすんでいることを物語っている。動物を保護するうえで大切なのは、それぞれの種についての基礎的な資料の収集である。どういう生き物なのかということが十分に調べられないまま、多くの動植物が地球上から姿を消しつつある。21世紀は「絶滅の世紀」と呼ばれるが、この絶滅はヒト(Homo sapiens)が引き起こしている点に特徴がある。生物の多様性の存在が人類の生存に大きく関わっていることを理解し、絶滅をくい止める努力が必要なのである。

参考文献

小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編 (2000−2001)『動物世界遺産:レッド・データ・アニマルズ』1−8巻、講談社。

なお、レッドリスト2000年版はインターネットで閲覧できる。

  • The 2000 IUCN Red List of Threatened Species