5)ワオキツネザルの社会

ワオキツネザルの群れの大きさは3−25頭と幅があるが、普通は13−15頭の複雄複雌の群れをつくって生活する(写真5)。採食時などに雌が雄を追い払うなど、雌のほうが雄よりも優位である。体の大きさにもほとんど性差がなく、雌にも立派な犬歯が生えている。雌の雄に対する優位性は霊長類の中でも特異なものである。母−娘の結束はかたいが、娘が母親につぐ順位を獲得するとは限らないし、姉妹間では姉の方が妹より優位である。つまりニホンザルなどでみられる”末子優位の法則”(末の娘ほど高い順位を獲得していく傾向)がワオキツネザルにはあてはまらない。母親に代わって幼少の妹の世話をする行動が頻繁に観察されており、姉の優位性は幼少時のこの行動と関連しているようだ。

(写真5):地上を群れで移動するワオキツネザル。