1. 焼畑と熱帯雨林

熱帯雨林の破壊が,地球環境への深刻な脅威と言われるようになって久しい。 その元凶の主なものとして,焼畑農耕(移動耕作)があげられている。 FAOはすでに1957年の時点で,次のような警告を発している。
湿潤熱帯環境における移動耕作は,農業生産の直接的な増加に対してだけではなく, 土壌,そして森林という形での,将来にわたる生産潜在力の保存に対しても,最大の 障害となっている。
このような,焼畑農耕を自然を破壊する「遅れた」農法であるとする見方がある一方で, 近年,この農法は実は,それが長年おこなわれている地域においてはむしろ合理的で,持続可能 sustainable なやり方であるという主張もなされている。 実際はどうなのか。 それに答えるには,きちんとしたフィールド調査による評価が必要だろう。

私はアフリカ中央部,コンゴ民主共和国(旧ザイール)の熱帯雨林に住むボンガンドと呼ばれる 人々の村で,人類学的調査をおこなった。 彼らの主要な生業である焼畑農耕も当然,調査の対象としたのだが,そこで上記の問題に 関して立てた問いは次の二つである。

  1. 焼畑農耕によって,一次林(原生林)は破壊されているのか?
  2. 畑になった土地の土壌は疲弊しているのか?
それではまず,ボンガンドの住む熱帯雨林の環境から見てみることにしよう。

熱帯雨林の一次林の中