8. 焼畑は熱帯雨林を破壊しているか
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「ミニ砂漠化」が起こった場所
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私の住んでいた村の近くに,何も生えてない砂地が細長く数百メートルも続く場所があった。(右の写真)。
なぜこのようになったのか村人に尋ねると,そこは16年前まで,今の村があったところなのだ,
という答えが返ってきた。
村では家の前に広い庭があり,少しでも草が生えるとそれはシャベルで削り取られる。
そういったことが数十年続けられると,土壌の粘土分は流出し,このような「ミニ砂漠化」
とでも言える現象が,熱帯雨林の中でも起こりうるのである。
かつては持続的でありえた焼畑農耕も,居住様式の変化によって,まかり間違えば
このような壊滅的な影響を環境に対して与えうるのだということを私は知った。
最初の問い
- 焼畑農耕によって,一次林(原生林)は破壊されているのか?
- 畑になった土地の土壌は疲弊しているのか?
に対する答えは,結局のところ「条件つきでイエス」ということである。
だからと言って,安易に彼らに「焼畑をやめろ」とか,「定住するな」,あるいは
「人口を増やすな」と言うのが無意味だということは,フィールドに行った
ことがある者なら誰でも知っていることだろう。
この問題に関する解答はしたがって,すぐに見つかる種類のものではない。
ただ,ひとつの救いは,今私が解析を進めている,1959年の航空写真と1980-90年代の
ランドサット画像の比較で,彼らの畑地がちょっと目にはわからないほどしか
拡大していないように見える,という点である。
つまり今の状況でさえも,彼らの農法は,大規模な木材伐採等に見られるほどには,
森林を破壊しているわけではないのである。
(この小論は,以下の論文をもとに作成しました。
Kimura, D. 1998 "Land Use in Shifting Cultivation: The Case of the Bongando (Ngandu) in Central Zaire" African Study Monographs Supplementary Issue 25, pp.179-203.)