第9回 地形・地質・植生・土壌観察

 趣旨

「地形・地質・植生・土壌観察」に関する野外実習

 講師

 概要

日時

2002年7月21日(日) 午前7時半−午後7時

場所
百瀬川扇状地、赤坂山(滋賀県)
参加者
12名 (学部生5 [文1;農4]、 院生6 [農1;AA研5]、 教官1)

 報告

今回は、まず、百瀬川扇状地の扇端部から扇頂部にかけて移動し、扇状地と川の関係および地形を観察しました。その後、赤坂山(823.8m)を登り、地質、地形、植生、土壌などを観察しました。しかし、この日はとても暑く、赤坂山登山は、かなり厳しいものになりました。暑さで、多くの人が水をたくさん飲んで、途中で水がなくなりかけ、かなりへばってきたとき、山間の清流に出会い、その冷たい水で、みな生き返りました。

百瀬川扇状地の扇端部では、百瀬川は天井川になっています。百瀬川は絶えず氾濫する荒れ川であったため、両側に堤防を築いて洪水を防いでいましたが、その堤防建築のため、川底に土砂がたまって河床が高くなり、再び氾濫するため、また堤防を高くし、さらに河床に土砂がたまり・・・という繰り返しの後、ご覧の通 り、河床が周りよりも高くなるという天井川になってしまいました。今では、河床の下にトンネルが掘られて、そこを車が通 ります。

百瀬川扇状地の扇央部。扇状地には砂礫が堆積しているため、扇央部では、川の水が地下にしみこみ、伏流しています。したがって、地表では川の水の流れは見られません。

扇央部でも、所々、堰が設けてあるところは、その堰で切られた壁から、伏流していた水がしみ出して、池を作っています。

谷から平地に出たばかりの扇頂部では、地表を川の水が流れています。この水が、少し下流の扇央部では地下にしみこんでいって伏流するのです。扇状地の末端の扇端部では、堆積物がそれまでの礫から砂に変わっていくため、伏流していた水に水圧がかかって、再び地表に出てきます。したがって、扇端部には、大沼、深清水など、湧き水にちなんだ地名の集落が見られます。

扇頂部での観察。

まだ、このころはみな元気。

赤坂山の山頂です。赤坂山山頂付近は、なだらかな地形で、まわりも比較的平坦な地形になっています。このあたりは、隆起準平原で、準平原になっていた平坦な地形が、地殻変動で持ち上げられ、平坦な山頂部を作りました。

赤坂山の登山道付近は、地質的にはペグマタイトの脈岩からなっています。ペグマタイトとは、花崗岩の結晶の大きなものを言い、登山道には、ペグマタイトが風化して遊離した大粒の結晶(長石、石英、黒雲母など)が地表を覆い、ザラザラした地表面 を作っています。ここまで、暑さでかなりへばりましたが、途中に山間から流れていた清流で、元気を取り戻しました。

赤坂山からは、眼下の扇状地や断層地形が観察されます。山頂では、少し風があって、湧き出る汗をひんやりと冷ましてくれました。

また、赤坂山に登る途中に時折見られるイヌブナの巨木も、気分を癒してくれます。

明王禿における花崗岩の崩壊地形です。花崗岩はタマネギの表皮を剥くように風化していきます。風化によって露出した岩肌には、イースター島のモアイ像を思わせるような巨岩も見られます(写 真中央)。

赤坂山を午前11時に登りだし、下山したのは午後4時です。下山後は、マキノ高原温泉で汗を流し、京都に帰ってからはバーベキューで打ち上げです。

今回は、ほんとうに疲れました。でも、楽しかったです。

 

次回は、9月下旬の予定です。

京都大学自然地理研究会

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