第79回 京大周辺の自然観察:大文字山と東山連峰

 趣旨

今回の研究会では、大文字山を舞台に植生と地形・地質という複数の面から身近なフィールドで自然観察を行いました。身近な里山の植物についての基本的な実習や、京都盆地を取り巻く山並み、とりわけ東山連峰についても概観しました。

 案内者

  • 小坂康之(アジア・アフリカ地域研究研究科、東南アジア専攻 助教)
  • 井出健人(文学研究科M1)
  • 水野一晴(アジア・アフリカ地域研究研究科、アフリカ専攻 准教授)

 野外実習の概要

日時
2013年4月21日(日)
場所
京都市大文字山
参加者
18名 (学部生4 [文1;農1;大阪大学 -文2]、 院生11[AA研5;文1;工1;農1;地環3]、 教職員3 [AA研3]、 その他1)
行程

白川今出川交差点南西角集合→銀閣寺横登山口から登山,適宜植生に関するレクチャー→「大」の字の火床,地形に関するレクチャー→大文字山山頂(昼食)→南禅寺方面へ下山→京都市内にて打ち上げ

 報告


毎年4月の実習は,新歓も兼ねて「京大近辺の自然観察」と題した企画を行なっています。今年の巡検は,京大生にとっても身近な存在である大文字山です。

登山口に近い白川今出川交差点に集合し,まずは自己紹介です。


登山開始…の前にちょっと寄り道です。今回登る大文字山への登山口は銀閣寺正門の脇を抜けた先にありますが,その銀閣寺正門での一枚。この一見何の変哲もない敷石,よーく覚えておいてください。


さて,登山開始です。京都東山では,2000年代後半ごろからカシノナガキクイムシが媒介するナラ菌によるミズナラ・コナラなどの枯死被害が拡大しています。今回も,その被害が大きい区域,対策が施された区域を通ることになります。


登山口から少し登った場所,まだ川のそばを歩いているうちに,このような岩肌を見ることができます。この赤茶けた岩石は,堆積岩であるチャートが熱変成を受けてできたホルンフェルス(変成岩)です。


歩きながらふと川底を見ると,このような白い砂が堆積しているのがわかります。この砂,「真砂」,「白川砂」と良い,大文字山に限らず東山から流れ出る河川沿いにはしばしば見られるものです。「白川」の由来になると共に京都市内の庭園にも使われてきた砂なのですが…この砂,一体どのようにして生じるのでしょうか。


先ほどの疑問の答えは,すぐ上流側にありました。この白い岩肌は,花崗岩が風化を受けて崩れている現場です。花崗岩は,風化により崩れやすく,この様な白い砂が大量に生じます。その砂は庭園の敷砂として重宝されもしますが,同時に脆い土壌は土砂崩れなどの災害を発生されやすくもなります。


現在の東山にあたる一帯は陸地化した当初,「丹波層群」として分類される堆積岩が分布していました。およそ9000万年前に,火山活動によりマグマが貫入し,そのマグマが冷却されることで花崗岩が,マグマの熱による変成を受けた堆積岩によってホルンフェルス層が形成されました。風化・浸食を受けやすい花崗岩と,硬いホルンフェルスの違いにより浸食箇所が決まり,比叡山と大文字山,という2つの峰が形成された,というのが東山の歴史です。登山口のチャートのホルンフェルスや銀閣寺正門の敷石は,この変成を受けた岩石の一部なのかもしれません。

第79回 京大周辺の自然観察:大文字山と東山連峰#2」へ続く

京都大学自然地理研究会

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