第53回 東京の地形を散歩する−上野・本郷を中心に−
趣旨
関東地方は、日本の中でも格別大きな平野が広がっている地域です。しかし、大きな山こそないものの、その平野の中には離水した年代の違う台地と低地が入り混じり、微妙な起伏を生み出しています。例えば、それまで地下を走っていた地下鉄が次の駅で突然地上3階に現れるというのも、こうした起伏のなせる業です。
今回は上野・本郷地区を中心に、このような細やかな東京の地形を実際に歩いて体感し、同時に、こうした地形を人々がどのように利用してきたのかを考察します。
案内者
- 田村茂樹(京都大学修士(理学))
- 中村真介(農学研究科)
座学の概要
- 日時
2010年3月11日(木)
- 場所
- 参加者
野外実習の概要
- 日時
2010年3月29日(月)
- 場所
- 参加者
- 行程
報告
東京の地形は、大まかにいうと標高20-30mくらいの山手台地と標高0m近辺の下町低地とに分かれます。さらに山手台地は、深い谷に削り込まれているため、削られ残った台地と削られた谷部の谷底低地に分けられます。今回は山手台地と下町低地の境界に当たる上野からスタートし、上野台地・旧谷田川(谷底低地)・本郷台地と登り下りを繰り返すルートを歩きました。
朝は、東京の北の玄関口・上野駅に集合です。かつては東北からの集団就職列車を数多く迎えた上野駅ですが、現在ではその面影を見つけることは難しくなっています。
この駅では、中央改札と13〜17番線ホームが1階にあり、そこから階段を上って2階に1〜12番線ホームが続いています。そのさらに上の3階にも乗換通路があるのですが、実はこの3階の乗換通路の先に公園改札があります。
つまり、上野駅の中央改札は1階にあるのに、別の公園改札は3階にあるのです!
★↓上野駅構内図をご覧いただけるとよくわかります↓★
http://www.jreast.co.jp/estation/stations/204.html
中央改札は下町低地に、公園改札は山手台地に面しています。その高度差が1階と3階という差になって表れるのです。
この高度差を体感したところで、山手線に乗って隣の鶯谷駅へ移動します。この区間では、山手線は山手台地と下町低地の境界部を走っています。
左が下町低地、右が山手台地
上野台地に立地する鶯谷駅から、線路の上を越えて低地へと下る歩道橋
鶯谷駅からは、上野台地の上に立地する上野公園へと入ります。ここは江戸時代、寛永寺の境内だった所で、明治になって東京国立博物館や現在の東京芸術大学が立てられました。
上野公園と満開の桜
廃止された京成電鉄の旧博物館動物園駅。京成線は上野台地の地下のごく浅い所を通っています。
上野東照宮の参道。当日はお花見でとても賑わっていました。
上野公園を後に、不忍池に下ります。不忍池は旧谷田川が流れていた谷底低地にあり、砂洲が川の流れをせき止めてできた池です。
不忍池。水の流れが止まっているからか、奥にはアシやヨシが生えています。
不忍池からは、再び登りに入ります。今度は東京大学の立地する本郷台地へ
無縁坂。東京には、このように台地と谷底低地を結ぶ坂が無数に存在します。
東京大学の本郷キャンパスは、本郷台地の上に立地しています。江戸時代には旧加賀藩の屋敷があった所で、その遺構が赤門として残されています。
ここでわれわれは一つの謎にぶつかりました。
本郷台地の標高は20m前後ですが、1:25,000地形図「東京首部」(http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html?meshcode=53394650)をみると、東京大学の構内には標高53.0mの三角点が存在します。これは一体どういうことか?
地図と大学構内図を照らし合わせると、三角点はどうも総合図書館の中にあるようです。
東京大学総合図書館の正面。昭和3年竣工の立派なものです。
われわれは屋上に三角点が設置されているのではないかと予想し館内を捜索しましたが、どうにも見つかりません。念のため退館時に職員の方に尋ねてみたところ、担当の方にご案内していただけることになりました。半年に1回ぐらい、こういう好事家が現れるそうです。
京都大学自然地理研究会
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