第45回 丹後半島海岸部の地形と人々の暮らし
趣旨
“京都の海”を舞台に丹後半島の地形と人々の暮らしについて勉強していく。京都府北部の丹後半島には京都府・福井県にまたがる若狭湾から続くリアス式海岸がみられる。リアス式海岸は、河川の浸食をうけた山地や丘陵が沈降することによって形成される地形で、複雑に入り組んだ海岸線を形成し、湾口が狭く水深が深いことが特徴である。そのため、湾内の波は穏やかで湾深くまで船が進入できるため、古くから港として利用されてきた。丹後半島にも多くの良港がみられ、古くから漁業が盛んに行われてきた。
今回は、このような地形の成り立ちとその地形を利用して営まれる人々の暮らしについて、身近な海である丹後半島において勉強し、理解を深めてい く。実習では、海岸部に特徴的な地形を形成し日本三景のひとつにもなっている天橋立や、“リアス式海岸港”のひとつで日本では珍しい高床式舟屋のみられる伊根の舟屋、さらに、岩石海岸の例として経ヶ岬、砂浜海岸の例として鳴き砂で有名な琴引浜などを訪れる。
案内者
- 山科千里(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
- 瀧口正治(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)
座学の概要
- 日時
2009年6月11日(木)
- 場所
- 参加者
野外実習の概要
- 日時
2009年6月14日(日)
- 場所
- 参加者
- 内容
- 丹後半島、海岸部の地形・地質の観察
- 海岸部の地形を利用した漁港と漁村の見学
- 行程
08:00 稲盛記念館南側駐車場集合、出発
11:00 天橋立(昼食)
13:30 伊根の舟屋
14:30 経ヶ岬 ※途中、屏風岩・立岩などの見学
15:30 琴引浜・掛津砂丘、周辺の散策
16:30 終了 ※途中、温泉「智恵の湯」+夕食
21:00 京都着
報告
今回は、海岸部における地形の発達とその地形を利用して営まれる人々の生活について知るため、京都府北西部の丹後半島を舞台に、座学と実習を行いました。
まず日本三景のひとつである天橋立(京都府宮津市)を訪れ、北側に位置する傘松公園の展望台にて、観察を行いました。天橋立の西には阿蘇海と呼ばれる内海があり、天橋立によって外海と隔てられています。天橋立を形成している砂は、外海である宮津湾の沿岸流と阿蘇海へ流入する河川によって運搬される土砂によって形成されたようです。白砂の上に黒松の生育する美しい景観が見られましたが、現在は海岸侵食による砂洲の縮小(周辺域の護岸による土砂供給量の減少が原因)が問題となっており、突堤の建設や護岸工事によって砂の流亡を防ぐ措置が取られています。
傘松公園からの天橋立。
伊弉諾尊が伊弉冉尊に会いに行くために架けた橋が倒れてできたという謂れがあります。
天橋立を股のぞき!!
ここ傘松公園は天橋立の股のぞき発祥の地だそうです。
天橋立の白砂と黒松。
奥に見える堆砂堤で土砂の流亡を防いでいます。
天橋立でのお昼休憩をはさみ、次に伊根の舟屋(京都府伊根町)に向かいました。伊根湾周辺に約200軒の「舟屋」が並ぶ日本でも珍しい地域です。ここでは伊根の舟屋公園からの遠景を眺めた後、現在も伊根で漁をしておられるお宅にお邪魔し、舟屋や伊根の漁業についてお話を伺いました。舟屋は、漁船を引き込むため、海に張り出すような形で建てられた船の倉庫で、高床式の2階建て構造になっています。船を入れる一階部分を舟屋と呼び、居住のための母屋は道を一本挟んだ陸側に建設されています。伊根湾の水深が非常に深いため大正時代まではクジラやイルカが湾内に入ってくることもあったそうです。一方で、水深の深さは舟屋が傾きやすいことにもつながり、それを防止するため、昭和ごろから護岸工事が行われています。200軒あまりある舟屋のうち、現在も100軒ほどが漁業を続けていますが、過疎化が進み伊根の伝統行事なども続けていくのが難しいそうです。
舟屋の里公園からの伊根湾の眺め。
伊根湾に並ぶ舟屋。
集落の通りから見た舟屋。一見すると普通の家ですが…
中に入るとそこは海です。
海側から見た舟屋の街並み。
京都大学自然地理研究会
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