第112回「下鴨・上賀茂神社の社叢林:植生観察と都市緑地としての役割」

 要旨

 良好な都市環境の保全において、神社は大きな役割を果たしています。神社を取り囲む社叢林(鎮守の森)は、神社の風致を保つだけでなく、自然とふれあうための都市緑地、あるいは地域コミュニティの活動の場としても機能しています。今回の巡検では、京都でもとりわけ長い歴史を持つ下鴨神社・上賀茂神社の社叢林で植生観察を行い、これらの神社が京都の都市環境にどのような役割を果たしているかを学びました。

 案内者

 西村直人(京都大学農学部) 重永瞬(文学部) 水野一晴(京都大学文学研究科)(補足)

 野外実習の概要

日時
2019年6月23日(日)
場所
下鴨神社・上賀茂神社
参加者
20名(学部生14名[文4、総人3、農3、AA1、龍谷大農1、奈良大文化財1]、院生2名[文2]、教職員2[文1、AA1]、社会人2)
行程
出町柳駅集合→下鴨神社で植生観察→上賀茂神社で植生観察→上賀茂社家町→大田神社→打ち上げ(BBQ)→解散

 報告

こちらは下鴨神社の一の鳥居です。かつてはこの周辺に下鴨神社の神官の屋敷が並んでいました。

境内に入りました。下鴨神社の社叢には、ムクノキやケヤキなどの落葉広葉樹が多く生えています。ここからは植物の説明をしていきますが、この記事を書いている報告者は植物の専門知識を持っているわけではないので、内容の正確さは保障できないことをご了承ください。

こちらはケヤキです。うろこ状にはがれたような樹皮を持ち、葉には鋸歯があります。

中央にクスノキが見えます。下鴨神社にクスノキが見られだしたのは1930年代以降のことです。1935年に鴨川で大水害が起こり、下鴨神社の社叢は大きな被害を受けました。その後の復興においてクスノキの植樹が行われ、現在では境内のあちらこちらで見られるようになっています。クスノキの葉にはダニ室という構造があり、内部にはフシダニというダニがいます。

少し分かりづらいですが、中央にアオイが生えています。アオイは下鴨神社の社紋にも用いられるシンボル的存在ですが、数が減っているために現在では積極的な育成がなされています。

とても大きな葉を持つこちらの木はホオノキです。他感作用(アレロパシー)という効果があり、この木の周辺では他の植物の成長が抑制されます。

京都大学自然地理研究会

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