第111回「賤ヶ岳・余呉湖周辺の自然と歴史」

 要旨

琵琶湖の北に位置する余呉湖と余呉湖を囲む賤ヶ岳について、地形や植生といった自然環境と、その地に刻まれた戦国時代の歴史について理解を深めます。

 案内者

雨宮いほ乃(京都大学文学研究科地理学専修修士課程)立石和奏(京都大学文学部地理学専修)

 野外実習の概要

日時
2019年5月26日(日)
場所
滋賀県余呉市 余呉湖・賤ヶ岳
参加者
12名(学部生6名[文4、農1、龍谷農1]、院生5名[文3、AA2]、教職員1名[文1])
行程
JR京都駅にて集合→JR余呉駅到着→余呉湖観光センターにて賤ヶ岳合戦の歴史見学、自己紹介→江土登山口より賤ヶ岳登山開始(途中、植生の解説あり)→山頂にて昼食、余呉湖・賤ヶ岳の地形や歴史の説明→琵琶湖側へ向かうルートで下山開始→下山後、JR木ノ本駅から京都へ→JR京都駅到着→JR京都駅付近にて打ち上げ

 報告

JR京都駅から1時間半ほど電車に乗ってJR余呉駅に到着。

JR余呉駅に到着後一番初めに余呉湖観光センターに立ち寄りました。余呉湖を取り囲む賤ヶ岳一帯は、安土桃山時代に織田信長の跡取りを巡った羽柴秀吉と柴田勝家の戦いの場となりました。ここ観光センターでは、いくつかの展示を通してその歴史の概要を見ることができました。

(写真左:この地にまつわる武家の家紋)(写真右:賤ヶ岳一帯の模型)

11時ごろに登山スタート。登山口は観光センターから歩いて3分ほどのところにあります。

登り始めてすぐに、「平和の鐘」があり、何人かが元気に鐘の音を響かせました。

登りながら、賤ヶ岳の地質や植生を観察しました。賤ヶ岳の土壌は赤褐色に近い色をしており、触ってみると粘土質でした。

生物多様性センターの植生図(2009)によると、賤ヶ岳は、スギ・ヒノキの人口林が優占する他、コナラ、アカマツも見られるとのことでしたが、実際は、リョウブやトチノキ、ヒサカキ、ホウノキ、カラスザンショウ、スゲ類など様々な植物を確認することができました。全体としては、人の手が加えられたスギ・ヒノキの人工林と、コナラやアカマツが成長した二次林が発達しており、林床にヒサカキなどの常緑広葉樹の低木が見られました。半分を超えたところで、巨木を見つけました。ケヤキだと思われます。

ふもとの方に生えていたスギ・ヒノキは手入れがされていませんでしたが、だんだん上がっていくと、下の写真のように、クマやシカによる剥皮被害を防ぐために、青いビニールテープが巻いてあるスギ・ヒノキが多く見られました。

また、風の通りが良いところでは、多くのスギが倒れている光景も確認しました。倒れたスギの根を観察すると、根は浅く伸びていて風に対する強度が弱いことがうかがえました。下の写真は別の樹種で、長く太い根を張っていましたが、倒れてしまったようです。余呉湖を含む滋賀県の多くの地域が昨年2018年9月の台風21号の影響を強く受け、多くの木が倒れたそうなので、ここもその影響を受けた場所の一つかもしれません。

13時半ごろに山頂(421m)に到着しました。とても良い眺めです。

集合写真を撮った後、賤ヶ岳を挟んで余呉湖の反対側にある琵琶湖を眺めながら昼食を取りました。そして、柳ヶ瀬断層など余呉湖の地形の説明を聞きました。14時半ごろに下山をスタートしました。30分ほどかけて下山した後、駅に向かう途中でスーパーに立ち寄りました。この地域の名物としてサラダパンというものがあり、興味のある人は買って試してみました。サラダパンはコッペパンにたくあんとマヨネーズが挟んでありました。

16時15分頃にJR木ノ本駅から電車に乗り、京都に帰りました。

18時前に無事JR京都駅に到着。一度解散して、京都駅近くのお店で打ち上げを行いました。

暑さが心配でしたが、山の中は涼しく、気持ちよくハイキングと地理の学びを得ることができました。

お疲れ様でした!(写真の背景は余呉湖)

京都大学自然地理研究会

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