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稲井啓之

(写真左:2003年にカメルーン東部州で撮った写真。写真右:2011年にチャド湖上で撮った写真。8年のうちに明らかに人相が悪くなった)

関心分野:

生態人類学、地域研究、チャド湖盆地における人びとの生活の動態,人類生態学,小規模開発プロジェクトをまとめて創発(より大きな地域での発展)を導く方法について

研究テーマ:「中・西部アフリカ内陸水域における水産資源の変動とそれをめぐる漁村社会の変容についての人類学的研究」

(写真左上:私の調査には三日月湖がありますが、一面を水草が覆い漁ができません。写真右上:川を隔てて対岸はコンゴ共和国。フランス語からリンガラ語に変わります。)

 2003年よりカメルーンへ調査をするようになりました。当初,カメルーン南部に広がる熱帯雨林の河川で調査をしていました。そこには,地元の漁師たちに混じって,カメルーン北部のサバンナから出稼ぎで漁をしていた人に出会いました。熱帯雨林の調査地と彼らの出身地は1,000km以上も離れています。こんな遠くまでわざわざ漁のためにやってくる出稼ぎ漁師の生き方に興味を持つようになりました。博士予備論文(修士論文に相当)の執筆を終えた2006年より,彼らの生まれ故郷であるカメルーン北部で調査をおこなうようになりました。出稼ぎ漁師たちの生まれ育った場所や生活習慣などを身をもって知ることで,彼らの生き方がどのようにして形成されてきたのかが分かると思ったからです。


(写真左:雨季の終わりころの氾濫原。原野が水で覆われます(2006年10月31日)。 写真右:水が引いた氾濫原。氾濫原に生えた草は乾きます。フルベやアラブ・ショアなどの牧畜民族が数百頭以上のウシやヤギの群れを連れて放牧します。)
 彼らの生まれ故郷であるカメルーン最北端の州,極北州東部は,年間の降水量が650mmと少なく,1年のうち8ヶ月間は乾季で雨が降りません。1年のほとんどは,大地は乾き,ひび割れ,荒涼としています。しかし,荒涼としたなかに,1年を通して枯れることなく,とうとうと水をたたえるロゴーヌ川が流れいます。この川はチャド共和国との自然国境になっています。ロゴーヌ川は毎年11月頃より氾濫し,約11万km2もの広大な氾濫原を形成します。氾濫原は人間だけでなく,生きとし生けるものに様々な恵みを与えてくれます。氾濫期の前後には,人びとはモロコシや水稲などの作物を植え付けます。氾濫期になると,動植物などの再生産の場となったり,食料庫になったりします。もちろん,人間もそこで漁や猟,採集などをして生活の糧を獲得します。

研究歴:

2003年4月 ASAFAS入学。

2003年8月〜2004年1月 (約6ヶ月間) 第一回フィールド調査。

2004年11月 第69回日本民族衛生学会において学会発表(研究業績1)。

2004年11〜2005年6月(約7ヶ月間)2度目のフィールド調査。赤道にほど近い熱帯河川であるンゴコ川流域のフィッシングキャンプにおいて,地元の漁師たちと出稼ぎ漁師たちの漁撈活動について調査した。

2006年 博士予備論文提出。「カメルーン東南部における漁撈活動」(研究業績2)

2006年 第43回アフリカ学会において発表(研究業績3)

     カメルーン東南部において,佐藤弘明教授の手伝いをさせていただいた研究の論文が共著にて出版(研究業績4)

         佐藤弘明教授の科研プロジェクト「熱帯雨林は人類にとって魅力的環境か;カメルーン南部熱帯雨林住民の生態人類学的研究」の報告書にて執筆(研究業績5;6)

2006年2月 カメルーン北部へ予備調査のため,約3週間滞在

2006年11月〜2007年8月 カメルーン北部にて調査

2007年  共同発表者として,日本人類学会にて発表(研究業績7;8)

2007年12月〜2008年1月 国際協力プロジェクト(代表:嶋田義仁 名古屋大学教授)のメンバーとして,カメルーン北部を中心として広域調査をおこなう

2008年  名古屋大学にて国際シンポジウムでカメルーン北部半乾燥帯の漁撈活動について報告(研究業績9)

     カメルーン,ヤウンデにて国際シンポジウムにおいて,気候変動とカメルーン北部の漁撈活動の変容について報告(研究業績10)

         第45回アフリカ学会にて学会発表(研究業績11)

2008年11月〜2009年2月 カメルーン北部へ調査

2010年 京都大学にて国際シンポジウム(コンゴ盆地の森林居住民の文化と現代的課題)にてポスター発表(研究業績12)

     平成19年度国際協力プロジェクト(代表:嶋田義仁 名古屋大学教授)報告書にて執筆(研究業績13)

     荒木茂教授の科研プロジェクト「『仮想地球』の創出に基づく地域研究統合データベースの作成」の報告書にて執筆(研究業績14)

     木村大治北西功一編「森棲みの生態学」にて一章を担当(研究業績15)

       フランス・モンペリエのCNRSにて,共同発表者として発表(研究業績16)

2011年  第48回アフリカ学会にて発表(研究業績17)

2011年1月〜4月  カメルーン北部およびチャド湖にて,出稼ぎ漁師たちのキャンプにて漁業の実態調査
          ローカルNGO(ADRES:Association pour Developement REgion Sahelienne, LOUBA:ムズグン語で「希望」の意味)を創設,副代表になる

2011年5月 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻 単位取得退学

2011年6月〜2012年3月  京都大学アフリカ地域研究資料センター 研究員

2012年5月〜       京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 研修員

2012年  Anthroplogical Scienceにて共著者として出版(研究業績18)

研究業績

論文

  • 佐藤弘明川村協平稲井啓之山内太郎(2006)「カメルーン南部熱帯多雨林における“ 純粋”な狩猟採集生活:小乾季における狩猟採集民Baka の20 日間の調査」,『アフリカ研究』,日本アフリカ学会,69 号,pp.1-14.
  • 稲井啓之(2006)「カメルーン東南部における漁撈活動」,京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士予備論文(修士論文に相当).
  • 稲井啓之(2010)「出稼ぎ漁民と地元漁民の共存:カメルーン東南部における漁撈実践の比較から」,木村大治北西功一編,『森棲みの生態誌』,pp.373-397,京都大学学術出版会.
  • Hiroaki SATO, Kyohei KAWAMURA, Koji HAYASHI, Hiroyuki INAI, Taro YAMAUCHI (2012)"Addressing the wild yam question: how Baka hunter-gatherers acted and lived during two controlled foraging trips in the tropical rainforest of southeastern Cameroon", Anthropological Science, No. 120(2). pp.129-149.

報告書

  • INAI Hiroyuki (2004) ”Fishing Activities in the Dja River, Southeastern Cameroon” In: Ichikawa, M. (ed.) Interim Research Report 2004 for Cameroon Ministry of Scientific and Technical Research: A Comparative Study on the Traditional Use of Tropical Rainforest. June 2004, Kyoto University, Japan.

(B)(1) 研究成果報告書[熱帯雨林は人類にとって魅力的環境か:カメルーン南部熱帯雨林住民の生態人類学的研究](代表:佐藤弘明)』,pp.11-36.

  • INAI Hiroyuki (2006) ”Fishing Activities in Tropical Rainforest in Southeast Cameroon” : Ichikawa M. (ed.) Interim Research Report 2006 for Cameroon Ministry of Scientific and Technical Research: A Comparative Study on the Traditional Use of Tropical Rainforest. June 2006, Kyoto University, Japan.
  • 稲井啓之(2006)「カメルーン南東部熱帯雨林域における漁撈活動」『平成15-17 年度科研費基盤研究(B)(1) 研究成果報告書[熱帯雨林は人類にとって魅力的環境か:カメルーン南部熱帯雨林住民の生態人類学的研究](代表:佐藤弘明)』,pp.75-121.
  • INAI Hiroyuki (2008) ”Environmental and Socio-economic Changes and Migration of Fishermen ’in the Floodplain Areas of Extreme-North Province, Cameroon-From the Analyses of Life-Histories of Migrant Fishermen-”In: Ichikawa M. (ed.) Interim Research Report 2007 for Cameroon Ministry of Scientific and Technical Research: A Comparative Study on the Traditional Use of Tropical Rainforest. June 2007,Kyoto University, Japan.
  • INAI Hiroyuki (2009) ”The Transition of Riverine Fisheries in the Lake Chad Basin” In: Kimura, D. (ed.) Interim Research Report 2008 for Cameroon Ministry of Scientific and Technical Research: A Comparative Study on the Traditional Use of Tropical Rainforest. June 2008, Kyoto University, Japan.
  • 稲井啓之(2010)「調査者としての草の根開発のありかた:カメルーン共和国極北部州マンジュール村での事例を通して」,『平成19 年度「国際協力イニシアティブ」伝統知識と技術の再活性化によるアフリカの草の根開発(Grass Root Developement) と環境保護 「アフリカに美しい村と町を作ろう」プロジェクト(代表:嶋田義仁)』
  • 稲井啓之,藤岡悠一郎(2010)「人類の揺籃としての氾濫原」,『平成19 − 21 年度科研費基盤研究(A) 研究成果報告書[『仮想地球空間』の創出に基づく地域研究統合データベースの作成](代表:荒木茂)』,pp.10-27.

刊行物

  • 稲井啓之(出版予定)「旅する漁師たちの出稼ぎへの思い」,嶋田義仁編,『カメルーンを知る60 章』,明石書店.
  • 稲井啓之,印刷中,「ロゴーヌ川」,「シャリ川」,「チャド湖」,高橋 裕,寶 馨,野々村邦夫,春山成子編,『日本・世界 河川の事典』,丸善.

口頭発表・ポスター発表

  • 口頭発表
    • 稲井啓之(2006)「カメルーン熱帯雨林域における漁撈活動」,『アフリカ学会』,第43 回,大阪.
    • Hiroyuki INAI (2008) 「From Floodplain to Tropical Rainforest river: Immigration and Social Relation through the Fisheries of Floodplain Fishermen Mousgoum」,『The Comparative Study between Swahili and Sahel (International Workshop)』, Nagoya. Japan.
    • 稲井啓之(2008)「カメルーン極北州氾濫原地域における社会経済的環境の変化と漁民の移動:漁民のライフ・ヒストリーの分析から」,『アフリカ学会』,第45 回,京都.
    • INAI Hiroyuki (2008)「The transition of riverine fisheries in the Lake Chad basin」,『Confer´ence International ”40 ans de recherche japonaise au Cameroun: A la m´emoire d’Eldridge Mohanmadou et Paul K. Eguchi ”』, Yaounde. Cameroon.
    • Hiroaki SATO, Kyohei KAWAMURA, Koji HAYASHI, Hiroyuki INAI, Taro YAMAUCHI(2010) "Observations of the Baka Hunter- Gatherers in Two Controlled Foraging Trips in the Tropical Rainforest of Southeastern Cameroon." International Conference on Congo Basin Hunter-Gatherers, Montpelier, France
    • 稲井啓之(2011)「チャド盆地における河川漁民の出稼ぎ漁のメカニズム:河川漁民ムズグンによる遠隔地出漁先の開拓と定着の動態の分析から」,『アフリカ学会』,第48 回,弘前.
    • INAI Hiroyuki (2012) "Fishing people Fishing people in transition at floodplain of Northern Cameroon" 科学研究費補助金基盤研究(S)「牧畜文化の解析によるアフロ・ユーラシア内陸乾燥地文明とその現代的動態の研究」・アフリカ学会中部支部共催国際シンポジウム「西アフリカ・イスラーム文明」,名古屋

人類学会』,第61 回,新潟.

    • INAI Hiroyuki (2010)「Coexistence of Migrant fishermen and Local Fishermen: A Comparison of Fishing Activities in South- Eastern Cameroon 」,『国際シンポジウム:コンゴ盆地森林居住民の文化と現代的課題』,  Kyoto, Japan.

その他

  • 山田睦月著,マンガ『コランタン号の航海−アホウドリの庭−』にて協力