大学院生の声(院生座談会)〜アフリカ専攻の魅力について語る

参加者:Aさん:(5年)、Bさん:(5年)、Cさん:(5年)、Dさん:(5年)、
Eさん:(4年)、Fさん:(3年)、Gさん:(2年)、Hさん:(2年)

 

Aさん:皆さん今日は「アフリカ専攻について大学院生が語り合う会」ということで、学年や調査地域、研究テーマが様々な8人が集まりました。どうぞよろしくお願いします。

一同:よろしくお願いします。

院生座談会の様子

入学前に持っていたアフリカ専攻の印象

Aさん:皆さん、入学前はアフリカ専攻についてどのような印象を持っていましたか?

Bさん:入学前のアフリカ専攻の印象?うーん・・・なんだっけなぁ。忘れちゃったな。

Aさん:私も思い出せないなあ。ちょっと若い人お願いします。はい、Hさんから。

Hさん:私は学外から入学しました。アフリカ専攻は「アフリカに行って研究している人たちが集まる場所」というイメージでした。

Bさん:京都大学の学部から来たGさんは?

Gさん:ASAFASのアフリカ専攻はキャンパスが本部から離れたところにあって、学部時代はあんまり関わりなかったのですが、アフリカ専攻に入学したら「大学院生でもアフリカに行けそう」と思っていました。

Fさん:私も他大学出身ですがアフリカ専攻は京都大学なので、賢くてまじめな人が多いのかなって思ってたら、みんな割と自由。気さくな感じでよかったです。

Eさん:僕も他大学から来たんですけど、みなさんと同じでアフリカに行ってフィールドワークをしてデータを取るという研究が大学院生でもできるっていうイメージを持っていました。あと、学部のときの指導教員にアフリカ専攻を受けたいですと相談した時に、アフリカ専攻は人類学の色が強いよと言われました。

入学後に感じたアフリカ専攻の印象

Aさん:入学してからアフリカ専攻の印象はどう変わりましたか?

Bさん:入学して間もなく開催された「アフリカ祭」の印象が強烈。新入生は先輩が作る料理の準備を手伝うんですが、普段は触れることのない調理の仕方だったり味だったり。

毎年4月に開催される「アフリカ祭」は京都大学アフリカ地域研究資料センターが主催するイベントで、新入生歓迎会も兼ねている。アフリカ専攻の教員や院生が調査する国の料理をふるまう。

Gさん:アフリカ専攻はフィールドワーク重視で自由な感じかと思いきや、実は1年生前期の半年間は授業ばっかりで忙しいですよね。それで地域研究に関する論理をしっかりやるんかなと思ったら、そうでもない・・・

一同:(笑)

Dさん:それは後に長期的なフィールドワークをしっかりやるために組まれたASAFAS独自のカリキュラムなんですよね(5年間のカリキュラムスケジュールは受験に関するQ&AのQ6を参照してください)。私もその意図が最初はわからなくて、自分の研究の時間がとれないと思っていました。だけど、授業ではいろんな先生が前期でいろんな地域やテーマの研究を紹介したり、安全対策や健康管理の方法を学んだり。じっくりフィールドに行けるようにということだったんですね。これは、ほかの大学院とは違うところだと思います。入学前はわからなかったことでした。

Bさん:1年生の前期は授業があるけど、そこを過ぎたら自由だよね。大学院生は次々に自分のフィールドに行くから、気づいたら1年半くらい会ってない院生とかもいるよね。そういう状況って、他の大学院では珍しいんじゃないかなと思います。

Cさん:確かに入学前って、正直、大学院生のカリキュラムは全くわかんなかったですよね。俺は木村さんの本を読んで、とりあえずフィールドに入るのかと思ってたけど、フィールドに入るまでにすることについては全くイメージできてなかったですね。初めの半年で集中的に授業を受けて、そのあとは自主的にフィールドワークに励んでいく感じって、入学して3年くらい経ってからわかりましたね。

入学試験について

Aさん:入学前に話はもどりますが、入試の準備って何をしました?

Hさん:オープンキャンパスに行ったのはよかったですね。アフリカ専攻の雰囲気もわかるし、参考になる論文や書籍とか教えてもらえるし、先輩たちとお話しして大学院生の活動もどんな感じかもわかるし。それから、過去問も閲覧できるじゃないですか。とにかくオープンキャンパスに行くのが大事ですよね。そのあとに、過去問を解いてみたり、紹介してもらった本で勉強するということをしていました。

Bさん:いま、アフリカ専攻のWebサイトの入学希望者向けの「研究室訪問のすすめ」というページに、お勧めの本のリストがあがってるらしいですね。

一同:へ~。

Bさん:そこで、ここの先生たちの本も紹介されているので参考になると思います。私のときはそんなリストはなかったけど。

Eさん:ちなみにそうした情報がなかったときはどんな風に準備をしてたんですか?

Bさん:どんな先生がいるかはWebサイトの「教員紹介」ページにあがっていたから、図書館に行ってその先生の本を探してた。でもものすごい数があるんです。何十年も前に書かれたものもあったし、最近のもあるし。とりあえず、興味があるタイトルの本を選んで読みましたね。

Aさん:私は太田さんのもとで研究したかったので、とにかく太田さんの書いた書籍や論文を読みまくった。専門の試験って、いくつかある選択肢の中から選べるから、とりあえず太田さんの本を読めば一題くらいは書けるだろうと思って。あとは、学部のときの自分の関心で勉強する。とにかく、持ち球を決めておいて、どんなお題が入試で出てきても持ち球をこねくり回して何とか書く。そんな感じだったなあ。

Gさん:英語も重要らしいですね。明確なビジョンでつくった研究計画があって、専門科目もすごく勉強してるんだけど、英語がダメだと厳しいらしいですよ。

Bさん:じゃあ英語対策のほうに熱を入れたほうがいいのかも。英語も年によって、「これいける」とか、「全然わかんない」とかあるよね。英語は3専攻統一だから、過去問を見るとアフリカ専攻でされている研究とは違うテーマの英文も出てくるよね。

Eさん:僕がオープンキャンパスに行った時に先輩から教えてもらったのは、英語は京都大学の赤本(教学社が発行している大学入試過去問題集)で勉強するってことですね。英語だけ載ってる『京大の英語』というような問題集をやったらいいんじゃないって言われました。

Bさん:うーん、確かに学部も大学院も問題体系が似てるもんね。

Cさん:英語科目の入試は辞書を持ち込みできるのはありがたいですよね。

Bさん:うん、わりと注釈もつけてくれてるから助かる。学部の入試に比べると文章の専門性がちょっとあがったくらいかな。私の学部の友達が京大の他研究科の大学院入試の対策してた時も、似たようなこと言ってた。

フィールド(調査地)と研究テーマの決定

Aさん:フィールドと研究テーマはどうやって決めましたか?入学時にどっちも決まってた人は、あまり多くないですよね。

Bさん:私は、どちらも決まっていなかったですね。

Cさん:それ結構大変ですね・・・。

Bさん:そうね~(笑)。ああ、でもウガンダに行く研究助成は決まってたな。具体的なテーマも調査地も決まってないけど、留学のためのお金はあったので、とりあえずウガンダでって感じで。なんとなく。これは天からのお達しやと(笑)。

Fさん:私は青年海外協力隊でアフリカに行ったことがあったので、もうこれに興味があるぞって感じで入ってきましたね。なんとなく場所だけ決まってるとか、研究分野だけ決まってるとか、そんな人もいて、入学後になんとなく変えたり決まったり…そんなのも楽しそうだなと思いますけど。

Hさん:私は入試の時に提出した自薦書に書いた内容をほぼそのまま今も研究していますね。でも指導教員を決めるときに、何人かの先生方といろんなお話を聞いて、ケニアにいってみようかな~とかいろいろ悩みました。入学したての段階で先生方とお話しすると、すごくイメージが膨らみますね。どんどん迷いますけど。でもとりあえず、フィールドもテーマも決めて行っちゃえばなんとかなるような気がします。

Bさん:村とかで調査してる方は、初めに村に入るところが割と難しいんじゃないかと思うんですけど。

Aさん:私はまあ、ぶらぶらして決めましたね。調査開始当時は、今のフィールドの住民はみんな国内避難民キャンプに住んでたんですね。そこにNGOと一緒に行って、キャンプにいる人と電話番号を交換して、あとで訪ねていく。その中で決めました。私自身は最初は街に住んでいて、そのあと村の首長など伝統的なリーダーについての研究をしていたので、ある首長の家にお世話になりました。そのあとは研究テーマ的に、その首長の家だと情報収集をしにくかったので、違う村の首長とも全く血縁関係もないキャンプの時の知合いのところの移りましたね。

村の首長が集うイベントの様子(ウガンダ共和国)

Cさん:僕もフィールドやテーマを決めたのは入学してからですねえ。学部時代はキンシャサに2年いましたけど、今のフィールドは全然違う場所なので。最初、先生のフィールドに行ったけど、「ここで俺がやりたい研究は全然できない」と思って、そこから逃げ出して、そのあとに出会った人たちについて行ったのが始まり。自分がやりたいことを説明して、「これでどうや」って言われたことを、とりあえずついて行ってやってみる。そんなことをしていたら、すごくネットワークが広まって今の研究になったね。別に自分で狙ってこういうフィールドでやりたいとか、こういうテーマでやりたいとか、はじめから自分で狙っていたということはあんまりなかったかな。その場で自分ができることと自分のまわりの縁で考えたら、いつの間にか流通に関する研究をやることになった。もちろんはじめて渡航するときもあるテーマは想定するんですけど、行ってみて2週間でこのテーマは無理やなって思いましたね。でも初めて渡航する際は、いろいろ妄想は膨らましておいたらいいのかもしれない。

Aさん:指導教員と一緒に村を探すのはどんな感じですか?

Eさん:僕の場合は入学時はテーマとか調査地も全く決まっていない状態で、最初やろうとしていたテーマについて、指導教員から「それはちょっと難しいんじゃない」って言われて。それで、やばいなと思ってた時に、指導教員から「これどう?」ってアドバイスいただいて、一緒に行きました。村落調査をやっているんですけど、どこがいいかっていうのを指導教員と一緒に車で回って、「ここら辺がいいんじゃないですかね」っていうのをある程度決めて、そこの村長さんの家に行って、「住まわせていただけますか?」と頼みましたね。


Eさんが調査する村落の景観。急な斜面も耕作地として利用されている(ウガンダ共和国)

Hさん:全然知らない村長さんですか?

Eさん:指導教員も全然知らなかった人に、突撃って感じですね。

一同:え~それけっこうアグレッシブだね(笑)!

Fさん:私は宗教教団の調査をしているので、最初は街で調査してたんですけど、もうちょっと田舎の方に行きたいと思って、友達に紹介してもらって、今のところにいます。

Eさん:GさんはNGOとか、地域住民とはちょっと違う社会関係があると思うんですけど、その辺はどうでしたか?

Gさん:野生動物の保全活動について研究しているので、カウンターパートがすごく重要になるんですけど、京都大学とはこれまでにコネクションはありませんでした。なので、まずは今の調査地に行って自分でNGOの人と話をして、いけそうだということで、まず申請書をだして調査許可書をとる手続きをはじめましたね。そこのNGOが国立公園の中で活動しているので、スムーズに調査に入ることができました。

フィールドでの過ごし方

Aさん:フィールドでの過ごし方とかはどんな感じですか?

Gさん:NGOのキャンプ地に住まわせてもらって、ごはんもキャンプの調査隊に対してシェフが作ってくれますね。シャワーもありますね。ただテント住まいです。NGOにお金を払ってるんですけどね。NGOはサファリツアーも担当しているので、欧米人向けのシェフがいるんですよ。お客さんが満足するようなものを料理できるように訓練されている人がいて、それで頼めばパスタとかつくってくれます。本来は、観光客と同じはずなんですけど、僕ひとりの時には同じものがでてこないこともあって(笑)でもたまに、お肉食べたいなとかいうと、だしてくれます。

Eさん:都市で生活されている場合は、どうですか?

Bさん:私は今、現地の方の家庭にホームステイさせてもらっています。わりと立派な家の1部屋を使わせてもらって、快適に生活できています。その前は一人暮らしをしていた時期もあるし、これまでの拠点にした3ヵ所のなかでは一番気に入っています。気を使うこともあるけれど、人と過ごしているのが良い点です。ほどよくかまってくれて、でも一人にしてもらいたい時には一人にさせてもらうことができるので、気に入っています。

Aさん:紛争経験とかの調査をしていると住民は外から帰ってきてごはんをともに食べてることがあるんですが、そのときにぽろっと言った一言が意外と重要なデータになったりして。

Bさん:何かがきっかけで、本とか読んでも知らないことをぽろっと教えてくれたり。

Gさん:家族とかとコミュニケーションをとる際は何語で話していますか?

Aさん:現地語です。最初に行った時にはあまりしゃべれなくて。お父さんくらいしか通じないから必死になりますよね。そうなると、どうしようもないから酒場で罵り言葉をたくさん覚えました!「くそ野郎!」とか。


現地の人びととのコミュニケーションを学べる酒場(ウガンダ共和国)

一同:(笑)。

Cさん:なんかAさんらしい(笑)

Eさん:フィールドワークにおいて調査助手の助けはとても大事ではないですか?僕が調査している村落では現地語でコミュニケーションをとる必要があるのですが、調査助手に通訳をお願いして情報を得ています。いま振り返ると、入学前には考えもしなかった重要な事柄だと思うのですが、皆さんはいかがですか?

Aさん:ある先輩が「調査助手の働きで9割決まる。」と言っていました。

一同:お~!

Bさん:あると思います。通訳も丁寧に訳してくれる人と面倒くさがって端折る人もいるし。

Gさん:その人のコネも重要ですよね。人脈というか。この調査助手の人だからこそ、その人や事柄にアプローチできる。

Bさん:私は一度、ジャーナリズム専攻を学んでいた人を雇っていた時があったのだけれど、街中でみた彼の顔の広さには驚いた。

Aさん:私は最初広域調査をする際に、英語とスワヒリ語の通訳を町から雇ってきていたのですが、村人とのインタビュー調査の中で、現地語から現地語への通訳が起きていました。私が拙い現地語をしゃべるので、一緒に暮らしている家族などの親しい人は、意味を汲んでくれるけれど、初対面の人は私が何を言っているか分からない。でも、村の中で調査をするときに、自分の家族の誰かを調査助手にして、私の現地語で相手がポカンとしていると調査助手がパッと「Aはこんなことを言いたいんや!」と向こうに言ってくれて。さらに、私が調査相手の訳してくれた言葉を理解できずにポカンとしていると、調査助手が言い換えてくれたりする。そうすることでよい点としては、インタビューしている人と私でコミュニケーションがとれて、途中で通訳ミスが入っていたり、自分や相手が言葉の取り方を間違ったりすることがその場でわかることだよね。今の調査助手はバッチリ!「Aはここが聞きたいんだろう!」と話を盛り上げてアシストをしてくれる。

Bさん:言葉の面以外でも、例えば食べ物の重量を計測したりするときに、長年調査を手伝ってくれている人だと調査手順や計測するタイミングを見逃さずにやってくれて、こっちが「ありがとう。そうそう。」みたいな状況になる。だから経験が長い助手だとそういうことがいっぱいありますよね。


現地の方法で調理しながら鍋の温度を測るBさんの調査助手(ウガンダ共和国)

フィールドで辛かったこと

Aさん:では、フィールドで楽しかったことや辛かったことはありますか?

Cさん:病気かな。マラリアで高熱にうなされた。あれはきつかった。

一同:(笑)

Eさん:一度は病気にかかりますよね。でもマラリアは予防薬と治療薬できっちりと対処すればしっかり治せますよね。

Aさん: アフリカ専攻の講義や講習会でも対処法はしっかりと教えられるしね。


大学院生を対象としたフィールドワーク安全講習会の様子(毎年6, 7月頃に開催)
詳細はアフリカ専攻Webサイト「安全基礎情報」のページを参照してください。

Gさん:おなかの調子を整えることも大事ですよね。便秘をいかに解決するか。僕の場合はバナナを1日2本食べるとスムーズになることが分かりました。朝必ず2本食べます。

一同:(笑)

Hさん:逆に、エチオピアで過ごしている私は主食のインジェラを毎日食べているから、毎日おなかの調子がいいんですよ。

Bさん:なるほど、インジェラは発酵食品だからね(笑)

Dさん:昆虫食は大丈夫?

Cさん:虫はぜんぜん大丈夫。おいしいよ。

フィールドで楽しかったこと

Cさん:フィールドで楽しいなと感じるのはどんな時ですか!?

Fさん:びっくりするような妖術の話とかを見聞きするときです。例えば、戸にハチミツを播きまくっていて、ハチが千匹くらい集っているんですよ。そこにみんなお参りしていく光景を見ていることはとても楽しい!

一同:(笑)

Dさん:私がフィールドに入った時には、私以外に海外の博士後期課程の学生が3人同じフィールドに入っていたり、NGOも活動しているので外国人が多く出入りしている環境にありました。私が現地語をまだ覚えたての時に、現地語でしゃべろうと意識して現地の人や子どもをまねると、現地の人が皮肉って「なんで俺たちの真似をするんだ。」と言われることもあったのですが、他の外国人がしないような現地のちょっとした所作とかをやった時に、相手が「それ知ってるんや!」って喜んでくれるんです。爺ちゃん婆ちゃんが喜ぶときはとくにうれしい。


Dさんの調査地での市場の様子。ウガンダ共和国(左)とコンゴ民主共和国(右)の国境上で行われる。

Cさん:爺ちゃん婆ちゃんが喜ぶときか(笑)

一同:(笑)

Dさん:お爺ちゃんお婆ちゃんの心をつかんだかなみたいな(笑)。次のステップに進んで再度渡航して同じフィールドに入ったり、同じ人に話を語ってもらうとき、地理的に距離がすごく離れているけれど親近感がとてもあって毎日楽しい。


居候先で家事を手伝う様子(ウガンダ共和国)

Hさん:私は企業の経営などについて研究しているので、企業に月曜日から土曜日の昼まで通っているんです。だから、土曜日の夜に飲むビールがおいしい!

一同:(笑)

Hさん:フィールドで通っている企業の方とお昼ご飯を一緒に食べさせていただけるようになったり、ご馳走していただけるようになったり。そのような中でこそ出てくるような話があるんですよ。「創業時はこうだった。」とか。従業員の愚痴だったりとか。それを聞いたりして、仲が良くなっていることを実感できることはすごい楽しい。

Hさんが調査している企業の製品生産工場(エチオピア連邦民主共和国)

Gさん:Fさんの意見と似ていますが、僕は大好きなゴリラを目の前で見られることが楽しいです。ヒトリゴリラ(生まれた群れを出て一人で遊動しているオスゴリラ)が、メスを獲得しようと頑張っている場面に出会ったり、ゴリラが小川で水を飲んでいる(すごく珍しい!)場面に出会ったり。研究者として行かないと出会えないようなシーンに出会える。それが研究のデータにならなくても、血がぶわっとたぎるみたいな感覚で「うわー見られたー」みたいなことはあります。あと、観光客だとお金を払わないとゴリラを見ることができないけれど、研究者として行くと同額を支払わなくていい(笑)


小川で水を飲むゴリラ(ウガンダ共和国)

一同:(笑)

Gさん:ちょっと観光客から羨ましがられることを言われることもあるんですよ。「君はいいね。毎日見ているの?」って。

Gさん:フィールドから帰るときにパーティーを開いてくれたんですよ。「Gがパーティーするらしい!」みたいな情報がバーッと流れて。大音量で音楽をかけて、ダンスパーティーみたいな。すごく楽しかったです。

Cさん:俺はね~、フィールドに行っていると楽しいとかつらいとか考えている暇がないんだよな~。現地の人は日本人では考えられないようなエネルギーを出していて、例えば自分たちで橋を直したりする。最初は彼らを見ていて自分は絶対にできないな~と思っていたことが、徐々に自分にもできるようになってきて現地の人に「あ~、お前コンゴ人になったな。」と言われたときはうれしかったですね。

Cさんの調査地で崩壊した橋を修理する村人(コンゴ民主共和国)

Bさん:私は子どもの成長かな。私の子どもじゃないよ?

一同:(笑)

Gさん:確かに。5年くらい通うと大きくなりますよね。

Bさん:そう。生まれたてだった子が、歩き出して、ちょっとずつ英語を覚えて、会いに行くたびに、人見知りする時期があったり、次に行くとすごく懐いてくれたり。その子の弟や妹が生まれて。あとその子たちのお母さんの生き様みたいなものにとても影響を受けて、私も将来「こんなお母さんになりたいな」と思ったりします。おばあちゃん世代にも思ったりも。自分の研究に全然関係はないけれど、子どもの成長を見届けることが私は楽しいですね。


Bさんがお世話になっている家の双子の赤ちゃん(ウガンダ共和国)

京都キャンパスでのアフリカ専攻の雰囲気や大学院生の生活

Aさん:では、アフリカ専攻の雰囲気や大学院生の共同生活はどうですか?

Fさん:(雰囲気は)いいんじゃないですか?あまりヒエラルキーを作らないというか。教員と院生の間でもさん付けで呼ぶ点とか。先生と学生の関係がきっちりしている他の大学や研究機関の話と比べると、良い意味でゆるい関係というか、もっとゆるくてもいいんじゃないかなと私は思います。理想的には。

Cさん:さらに!

Fさん:いやーやっぱり他の機関と比べるとゆるい。いいことなんじゃないかなーと思いますけど。

Aさん:院生どうしの雰囲気はどうですか?

Bさん:院生室は他の大学では、指導教員や講座を単位として院生がひとつの部屋にまとまっているところが多いのでは?理系の研究室ではそちらのほうが多いでしょう?けれど、アフリカ専攻では、講座や指導教員は関係なしに、さらに研究テーマや調査国も違う大学院生がひとつの部屋を使うから、いろいろなことを相談できる点が特徴だと思います。

院生室の様子。大学院生には専用の机が配分され、院生室には個別に利用できる本棚やプリンタ等の研究環境が整えられている。

水曜ゼミについて

Aさん:アフリカ専攻では、毎週水曜日の午後に京都にいる全教員・研究員・大学院生が揃ってゼミを行っています。この「水曜ゼミ」の魅力や面白さを挙げてください。

Eさん:アフリカ専攻のゼミは講座や指導教員別で分かれていないですから。すごく珍しいゼミの形式ですよね。


水曜ゼミの様子。毎週水曜日、アフリカ専攻に所属する教員・研究員・大学院生が集い、1~3件の研究発表が行われる。

Gさん:ゼミでいろいろな分野の人が混在しているからこそ、研究発表やそれに対するコメントを理解する上で難しさやわかりにくさがたくさんあると思いますが、その一方で発表者や聞き手の研究の突破口になるような意見や質問が出たりする可能性があるんじゃないですか?

Bさん:伝える側も何回も聞いている人同士では端折ってしまうようなところも、水曜ゼミだと自分の研究を初めて聞くような人や分野が違う人がいることで丁寧に説明することになる。そういった点は学会などで活きてくると思います。

博士予備論文と博士論文における挑戦について

Aさん:博士予備論文(予備論)と博士論文(博論)における挑戦。私はここまで来ちゃったらささっと博論を書いて完走することを目指すしかないという気がします。選択肢は限られちゃっているけれど、あとは乗り越えるしかない。

Dさん:ASAFASでは自らのフィールドワークで得た調査データに基づいて予備論と博論を書くというプロセスが一般的ですが、私は予備論の時に調査予定地の治安が悪化したためにフィールドワークができず、その一般的なプロセスを踏襲することができていなくて、他の研究科の修士課程でやるような二次資料や先行研究の検討をやりました。フィールドワークをしたかったのに、フィールドで実際に起きていることと違うんじゃないのかなと迷いながら、ずっと本のお話ししかできていないジレンマが私の中にありました。予備論が終わってはじめて、フィールドワークを行える段階になりました。だから、私個人の博論にむけて圧倒的に足りないのがフィールドにおけるデータなんです。私は調査地でまずデータを取って、「こんなストーリーが提示できそうだ」と考えながら関連する文献を集めてくるというプロセスをふまずに予備論文では先にテーマを決めてしまって、二次資料と先行研究からストーリーをつくったけれども、一度それを取っ払ってフィールドに行くので、「かなり無駄が多いな」と思うこともあります。

一同:いやいや、そんな無駄ではない。


Dさんのインタビュー調査の合間にインフォーマントが談笑している場面(ウガンダ共和国)

Aさん:フィールドから帰った後に先行研究をチェックして、「あの時にもっとこれを聞いておけばよかった。これを聞いておけば比較ができたのに。」と思うことがあるよね。こういった一歩足りない点とかがあるので、Dさんとは逆にフィールドを先に経験するプロセスでも難しさはあります。

Dさん:たしかに、いろいろな研究プロセスがあってもいいなと思います。フィールドに入る前に文献研究をしておくことには利点もたくさんあって、先行研究がどういったデータでどこまで議論しているのかはこれからデータを取るうえで参考になりました。フィールドで見えることを他地域との報告と比較することで一般性や地域の特異性が見えてきますし、30年前の先行研究と比較することで「ずっと変わっていないこと」にその場で気づいたり「今起こっていること」を伝える大切さも感じます。ずっと通い続けることで、その先に見えることがあるんでしょうね。だから、博論が終わってもフィールドワークは終わらないですよね?そのまま続くというか(笑)

Aさん:博士号とった後も助成金をとって1年くらいフィールドに行きたい!

Dさん:フィールドに行けるってありがたいなとすごく思います。

Fさん:私の場合、私の研究分野を専門とする教員がアフリカ専攻内にいない状況なのですが、アフリカ専攻の院生という立場でも、自身の専攻以外の文学研究科や人間・環境学研究科の授業を取ることができます。フランス語や他の人類学系の科目なども外部で提供されている講義を自由に履修できる点が良いです。さらに、京大の外にも出ていって、いろんな研究者や研究会から学びながら博論を書いていくことが、私の挑戦というか自由の利くアフリカ専攻にいてできる良い点です。私みたいに大学を卒業して10年経ってから戻ってきた人は、予備論や博論のその先というものを考えないからこそできることもあって。「いまやりたいことにいかにしてとりくむか。」それはアフリカのフィールドにいる友人たちから学んだことでもあって、「予測不可能なことに思いわずらうことなく日々を過ごす」という生きる姿勢を身に着ける(笑)そういうことかなと考えます。

Cさん:フィールドに行って帰って、を繰り返していると、Fさんが述べたような調査地の人びとの生きる姿勢に共感をおぼえることと、予測しながらものごとをすすめていくことが前提になっている日本の社会にどのように適応していくかということとのあいだで葛藤することがありますね。

Eさん:予備論を書いて就職する人もある程度いますし、仕事をやめてアフリカ専攻に入学して研究を始める人もいますね。Aさんのように博論書いた後にすぐアフリカに戻ってフィールドワークしたい人もいますし。こうして集まって話すと、皆さんそれぞれで葛藤しながら挑戦しているのだと思いました。ではBさん、最後にアフリカ専攻への入学に興味がある方に一言お願いします。

Bさん:私たちの専攻ではアフリカでの長期のフィールドワークをふくめて、自由にのびのびと研究できることが院生にとって最大の魅力です。アフリカや京都で院生生活をともに楽しみましょう。研究室訪問やオープンキャンパスでは院生とも交流できるので、ぜひ参加してください!