アフリカ地域研究専攻では、アフリカ地域研究やフィールドワークに関わる講義、それぞれの研究発表をおこなう演習や課題研究、そして、アフリカでの調査研究のための教育研究支援プログラムを介して教育活動を実施しています(2018年度より、以下のとおり講座名と講義名を改訂)。これにくわえて、アフリカ地域研究専攻の院生は、京都大学アフリカ地域研究資料センターが主催するアフリカ地域研究会や英語によるKUASSセミナーなど、アフリカ地域研究にたずさわる国内、海外の研究者による成果発表の場に参加することもできます。

 

大学院講義

生業生態論講座

農耕、牧畜、狩猟、採集、漁撈、商業、製造業などの伝統的な基盤をもつ生業の構造と機能、およびその自然的基盤を広義の生態学的手法によって分析する方法を学びます。それらの生業とより広い世界の政治・経済・社会的な枠組みとの関係に着目し、生計戦略や地域経済の特質を再評価しつつ、現代アフリカにおける人間と自然の関係のあり方について議論します。

 

アフリカ社会経済論(池野旬)

1980年代以降に、グローバル化、構造調整政策、貧困削減政策、複数政党制、地方分権化の影響で、アフリカ農村は大きく変容しつつある。本講では、近年出版されたアフリカ農村の長・短期の社 会経済変容を扱った文献を主としてとりあげて、それらの問題関心や分析手法について学ぶ。

農業生態論(伊谷樹一)

アフリカ農業の現状を、生態環境や社会の動きと関連づけながら総合的に理解する。また、アフリカ農村が抱える食料–経済–エネルギーの複層的な関係性に関する理解を深めつつ、持続可能な地域発展のあり方について議論する。

野生動物保全論(山越言)

野生生物の保全は、世界各地のさまざま生態系がもつ生物多様性を維持するための地球規模の問題群を構成する。いっぽう、これらの動物と接して暮らす人々にとっては、固有の歴史と動物観に基づいた、地域特有な問題群の一部となっている。野生動物保全をグローバルとローカルが交差する現代的問題のひとつとして捉え直し、関連する基礎的な概念について、読解・討論を通じて理解する。

生態史論(安岡宏和)

人間と生態系との関係(史)について、中部アフリカ熱帯雨林における具体例をとりあげて講義したうえで、生物多様性保全や持続的な地域開発にかかわる諸問題において、人間と生態系との関係(史)に関する研究が、どのような観点から重要であるかについて議論する。

 

社会共生論講座

アフリカに暮らす人々が長い歴史をとおして培ってきた多様な文化的実践とその特性を、言語的・非言語的アプローチ双方を活用するフィールドワークによって把握する手法を学びます。その知見をもとに、現代の複合社会における多民族共存や地域文化形成のメカニズムと、それを支えている自然的、歴史的、社会的な基盤を解明し、アフリカにおける多元共生的な社会のあり方について議論します。

 

アフリカの生態と社会(木村大治)

フィールドへの入り方、テーマの見つけ方、データの集め方、論文の書き方等に関するいくつかのトピックを取り上げ、アフリカ熱帯雨林での農耕民、狩猟採集民の生態と社会に関する調査経験にもとづいて話す。

アフリカ都市社会論(平野(野元)美佐)

サハラ以南アフリカの都市の多くは、古くは奴隷貿易、続いてヨーロッパによる植民地支配、そして現在のグローバリゼーションに至るまで、つねに外部の影響を大きく受けながら社会を形成してきた。ローカルとグローバルがせめぎ合うアフリカ都市に関する研究を検討し、アフリカ都市社会の動態を多角的に理解することを目指す。

相互行為論(高田明)

この授業では、講師が収集してきた学際的な研究資料を用いて、とくに現代のアフリカ社会に生きる人々のさまざまな自然的・社会的な資源の利用に注目しながら、相互行為を組織化する仕組みについて議論する。年度ごとにこの主題に関係するテーマを選び、授業の参加者と経験的・理論的な議論をおこなう。

生業とものつくり(金子守恵)

現代アフリカに暮らす人びとを理解するための中心的な対象のひとつは、彼らが日々を生きていくための生業活動である。エチオピアでの生業活動(土器製作、農業、土産物製作)を事例にしながら、フィールドワークという手法をもちい、ヒトと「もの」の関係に着目して彼らの生業活動にみいだされる特性を検討する。アフリカに暮らす人びとが日々変化する諸環境への対応の仕方、ヒトと「もの」の関係に注目したフィールドワークの可能性、そして調査者が外部者としてフィールドに 関わることの可能性について議論する。

 

アフリカ潜在力講座

アフリカが今日直面している種々の問題を歴史的経緯と社会的動態のなかで同定し、アフリカ社会が外部世界との折衝・交渉のなかで創造し実践・運用・生成してきた問題解決のための動的な力を「アフリカ潜在力」として評価する手法を学びます。この概念を基盤として、現代世界の困難を克服し人類の未来を展望するためのアフリカ発の知の様式と実践的な方策を議論します。

 

地域潜在力論(太田至)

現在のアフリカ社会が直面する最大の困難は、紛争による社会秩序の解体と疲弊である。アフリカに限らず現代の紛争では、多数の一般大衆が紛争に巻きこまれて激しく対立し、多くの難民や国内避難民が発生している。このような事態を、地域研究はどのように理解しうるのか、そして、それへの対処の道を探求するために、どのような貢献ができるのだろうか。本講義では、とくに1990年代以降にアフリカで発生した紛争問題をとりあげて、その原因や紛争の経過、解決のためにとられた方法を紹介する。そして、平和構築と社会関係の修復、民族の共存のために西欧近代の制度や価値観を導入するのではなく、アフリカ人がみずから創造・蓄積し、運用してきた知識や制度―アフリカ潜在力―をいかに活用できるのかを考える。

在来知と内発的発展(重田眞義)

これまでは、アフリカ農業における諸問題とその歴史的過程を、ヒト-植物関係論[農業科学、人類学、生態学、栽培植物起源学、民族植物学(エスノボタニー)、ドメスティケーション論など]の立場から考察してきた。今年度の講義では、長年にわたってアフリカの人々が培ってきた文化的資源としての在来知と、それを操る人びとの集まり(新たなコミュニティー)の分析を通じて地域社会における発展の問題について考える。農村、教育、博物館、生物多様性、ものつくり、定期市などをキーワードにして上記の問題にアプローチする。

アフリカ開発論(高橋基樹)

現代アフリカの社会を語る際に〈開発〉という現象を抜きにすることはできない。〈開発〉は、国家との接触の増加、市場の浸透、共同体の変質というかたちで、人びとを取り巻く環境の変容として起こる場合もあれば、外部の人間あるいは住民自身が主体となって、意識化できるかたちで進められる場合もある。本講義では、アフリカで生じている開発現象について広くとらえながら、その内容、背景、また人びとへの影響、さらにはそこで発揮される人びと自身の主体性について、歴史的観点もまじえつつ、具体的に考察する。

アフリカ環境学(大山修一)

近年、アフリカで調査をしていると、さまざまな変化に目を奪われることが多くなりました。人口増加や都市化の進展、資源開発や物流、外資系企業の活動などの経済の動き、気候変動の問題、自然資源の利用や生態系への影響、選挙や法律の改変、土地制度の整備など、その変化は多岐にわたります。講義や簡単な実習を通じて、アフリカの自然・社会環境に生じている変化とそれにアプローチする研究手法について考えていきます。

 

専攻内共通

熱帯病学

アジア・アフリカ地域研究研究科ではアジア・アフリカ地域でのフィールドワークを行う研究者が多い。ところがこれらの地域は我が国に見られない種々の感染症を中心とした疾病が見られる。これらの疾病に対する知識を深め、健康に研究を遂行するための諸知識を習得する。

実践的開発協力論

アフリカの農業・農村開発分野における技術協力の実例から、開発援助事業が本来目指していることと現場で起こっている様々な事象を題材にした講義。開発援助事業の概要を解説した後、開発とは何か、受益者・現地行政官・開発ワーカーなど関係者それぞれのリアリティ、開発ワーカーの考え方、行動、役割、求められる能力などを議論する。

アフリカ政治論

現代アフリカの政治を考えるうえで欠かせない既往の研究を把握するとともに、受講者が具体的な調査をするために必要なアフリカ政治に関する基本的知識を涵養する。

 

研究科共通科目

地域研究論

研究科共通科目として、地域研究の性格・歴史・成果・展望・課題などについて研究科内の教員がオムニバス形式で自己の研究を踏まえて論じる。

アジア・アフリカ地域研究演習

地域研究論(講義)をうけて、そこで提起された問題に対して学生各自がどのように考え、自らの地域研究をいかに組み立てていくかを相互討論する演習。

アフリカ地域研究公開演習

研究科共通科目として、本学のみでなく、他大学の研究者、さらには市民にも公開された研究会やシンポジウム形式での演習で、そこでアフリカについての地域研究の成果を発表し、公開討論の場で相互討論する。

研究発信トレーニング Ⅰ

海外で学術調査をおこなうための研究計画書 を作成する諸技術を実習形式で習得することを目的とする。外国語による研究計画書作成するための技術を獲得するとともに、計画書作成を通じて今後の研究の方向性や具体的なすすめ方をより明確にしていくことをめざす。

研究発信トレーニング Ⅱ

海外で自らの研究成果を発信するために必要な諸技術を実習形式で習得することを目的とする。外国語による高いレベルの口頭発表の技術を学び、その作業を通して研究者として必要な自己表現の方法や必要な外国語能力を修養する。

院生発案国際共同研究

地域研究の諸課題について国際共同研究グループを組織して参加し、成果発表とその準備の過程をつうじて国際的な研究交流および研究経営の能力をみにつける。

リスク公共相関論

人びとは、一方では感染症のような自然の脅威、他方では社会的な対立・孤立といった問題に直面しながら、みずからの生存を確保してゆくことを迫られる。人びとが生存を脅かすリスクに対処するには、身体の健康やライフステージ、社会的な立場、価値観などを異にする者のあいだで、問題の所在を把握し必要な行動をおこすための合 意を形成する必要がある。またその合意が、より高いリスクにさらされている者に配慮し、結果として多様な人びとの生存の質を高める行動につながるための、倫理的な裏づけについて考える必要がある。この講義で は、上述のようなリスク公共相関論の課題について、アジア・アフリカ諸 地域の具体的な事例とともに検討する。本年度は特に、「人類の生存基盤としてのケアの倫理と実践」、および「感染症問題に対処する公共性構築」に焦点をあてる。加えて、京都大学の9 研究科・3研究所が参画する「グローバル生存学」の範囲と視座について概論的な紹介をおこなう。

関連語学Ⅱ(スワヒリ語Ⅰ(初級))

スワヒリ語はタンザニアおよびケニアの国家語であり、東アフリカを代表する共通語である。名詞クラスなどスワヒリ語の初級文法の理解を基本とし、語彙、基本文型、実際の会話表現なども学ぶことで、初級に相当する読解力の習得を目指す。

関連語学Ⅲ(スワヒリ語Ⅱ(中級))

スワヒリ語はタンザニアおよびケニアの国家語であり、東アフリカを代表する共通語である。スワヒリ語の標準文法の理解をさらに深め、新たな語彙や慣用表現を学ぶことで、総合 的な読解力の習得を目指す。

関連語学 Ⅲ(アムハラ語 Ⅰ(初級))

アムハラ語は、エチオピアにおける 主要言語のひとつである。独自の文字を有し、同国のアムハラ州や、首都アジスアベバをはじめとする都市を中心に広く通用する。本講義では、アムハラ語の基礎的な会話、文法および文字の習得を目指す。

関連語学 Ⅲ(アムハラ語 Ⅱ(中級))

エチオピアでのフィールドワークにアムハラ語の知識・運用能力は不可欠と言って良い。本講義ではアムハラ語の初級文法既習者を対象に,その知識を整理しつつ更に深めて確実なものにし,きちんとしたアムハラ語の力をつける事を目標とする。こうしてアムハラ語の基盤を確実にすることは,運用能力の伸張にも大いに寄与するものである。